永蔦ななめよみ(16)
読書日記2005

2005/02/18 Fri  大石学『新選組』

 松浦玲氏の『新選組』(岩波新書)を取りあげた際に、大河ドラマの力はさすがである、というような趣旨のことを述べた記憶がある。その放送終了に合わせるように、時代考証を担当された大石学氏の『新選組』(中公新書)が出版された。
 “「最後の武士」の実像”という副題が示すとおり、司馬遼太郎作品に代表されるイメージに対する疑問を提出する視角から著されている。といって、新選組ファンを敵にまわすような性格のものではなく、ファンによる研究の蓄積を真摯に継承しようとする態度が明確に見られ、清々しい印象を与える。別の言い方をすると、主張が控えめで物足りない感じもないではない。もうちょっと踏み込んで言いたいこともあったのではないかと推測する。
 だが、それが本書の瑕になっている訳ではない。本書の何よりの価値は、いちいち出典を確認しながら編年体で精密な通史を叙述している点にある。利用価値は高く、「今回の新選組ブームの最後に生まれながらも、新たな新選組研究の出発点となること」(あとがき)は疑いないと思うのである。