愛 す べ き 横 型 F E T

(01042201)




東芝の2SK30ATM
(|Yfs|=1.2mS、Igss=1nA、Crss=2.6pF)

金田式DCアンプの長い歴史を最初からずっと支え続け、しかも未だに現行品という希有な存在。

現行品でどこでも容易に入手可能だから博物館には未だ相応しくはないものだが、殿堂入りという意味では最も相応しい。

では、博物館にも相応しいように旧型のK30もお見せしましょう。
それが左で右の現行品より随分小さい。が、実はこれもK30Aと表記されているから本当の初期型ではないかな。(^^;

金田式DCアンプでは初段差動アンプ用として用いられる。
かつての初段差動アンプの役割は端的に言えばバッファーで、GmよりもIgやCrssが小さいことが重要だった訳だが、近年初段差動アンプに電圧ゲインの確保という役割も負わせることになってもなおこの2SK30が起用されているのは無理矢理という感もある・・・。やはりその音ゆえか(^^;

ところで、これを初段差動アンプに用いるためにはデュアルFETではないから当然ペア選別が必須だ。

厳密に測定するとなれば動作状態でVgsを測ってペアにすることになるが、大抵はIdssを測定してこれが一致するものをペアにすれば十分ということになっている。

さらに、いにしえにはゲート漏れ電流の少ないものを選別してこれを信号入力側に割り当てるという作業があった。が、今や知る人も少ないかも知れない。

左がその測定回路の一例だが、まずSWオンの状態でVRを調整しIdを例えば1mAに設定した状態でSWをオフにすると右下の式でゲート漏れ電流Igが計測される。
簡単にはSWオフでのIdの増加度合いで選別する。

いにしえの頃これに合格するK30の率は随分低かったと記憶しているが、最近のK30はどうだろう?

カスコードアンプを付加し、Vdを下げてIgを下げCrssの影響も排除するものとなって、こんなことをする必要などなくなったのだが、色々なFETで試してみると面白いかもしれない。(勿論各FETの耐圧に合わせてVddは調整して下さい)




(01093001)

上で微かな記憶に基づいて「本当の初期型ではないかな」と書いたら、本当の初期型がやってきた・・・(。。)
   

東芝の2SK30
末尾に「A」も「ATM」も付かない。即ちこれがオリジナルの2SK30・・・
そうだったよね、あの頃のK30にはこんな鍔のようなものが付いてたっけ・・・これを見るのはもうかれこれ30年ぶりぐらいじゃなかろうか
金田式が登場した頃にはまだあった。これを熱結合して金田式に起用するのは鍔の部分を削って接着しなければならなかった。・・・そんなことをやったような記憶があるのだが・・・もはや定かではない(^^;

(発掘者izuさん)

(01042802)


デュアルFET、ソリトロンのFD1840とFD1841。

FD1840は2N3954の、FD1841は2N3954AのIdss選別品。よってFD1841の方が
デュアルFETのペアマッチ度が優れている。

これら2N3954ファミリーのVgds耐圧は2SK30に同じ50Vだが、50Vかけてもゲート漏れ電流が国産に比較して段違いに少ない上に、ペアマッチ度も優れている・・・はずだったのだが・・・(^^;

左のFD1840は1987年製で右のFD1841は1999年製だが、2N3954ファミリーはソリトロン社で今も生産されている現行品のようだ。

金田式DCアンプでの初採用は75年3月号のNo−14と、これも古いFETだが、2000年6月号のNo−159で久しぶりに復活した。

再生系ではK30で代用可能なのだが、DCマイクを製作しようとすればこれ以外に選択肢はない?




(01042901)



DL−103でレコードを聴く・・・なんてすっかりマイナーな世界になった。世のプリアンプもフォノ入力などなくて普通。

この国も遺産の切り捨ては早い。日本人の諦観は経済合理性に寛容だ。

ソニーの2SK97、2SK245。
超マイナーなおじさんだけに必須の国産デュアルFET(^^;

|Yfs|が大きい割にCrssはそんなでもなく、ノイズも小さくてMCカートリッジに対応したゲインが確保できる唯一のデュアルFETで、金田式DCプリアンプのMCイコライザーはこの2種のFETのどちらかがないと製作できない。(真空管を使う方は格別(^^;)

そもそも初段差動アンプ用に開発されたデュアルFETだと思うが、その用途にはIdssが不必要に大きいのが面白いところ。
2段目差動アンプに起用しても良さそうだが、その場合初段用のデバイスがない。

別の使い道?があったのか。どなたかご存じであれば教えて下さい。





(01042902)



東芝2SJ72

Idssや|Yfs|は国産横型FETでは最大級で、無理なくTRに匹敵または上回るゲイン確保が可能な希有なFETだった。

91年9月号のNo−122“オールFETスーパーストレート・プリアンプ”で初めて採用されたが「そのCrssは185pF。溜息が出そうなバカでかい値だ」と嘆かれている。

実はCrssはCissの間違いで、正しいCrssは55pFだ。Cissは確かにでかいが、そのIdssと|Yfs|の大きさ、さらに優れた直線性でパワーアンプの2段目差動アンプにも起用できることを考えると、小型FETや小型TRと対比するのはかわいそうで、A607やC960に比べて少し大きいかな、と言うのが妥当な線か(^^;

残念ながらディスコンで入手困難だが、今となっては使おうという人もないだろう。







(01043001)



良く見えないが、モトローラ製?2N5465
わざわざ後ろ側を写したのは微かに残る3本の帯状の線をお見せするため。

2N5465。改訂版「最新オーディオDCアンプ」にデータシートが載っているこれも古いFETだ。いにしえにDCチャンネル・デバイダーで2SC1400と組み合わせて使用されたが、CRによるパッシブデバイダーの登場とともに活躍の場をなくした。

が、10数年を経て上のJ72に同じく91年9月号のNo−122“オールFETスーパーストレート・プリアンプ”で復活し、以来、そのCrssが1pFと入手可能なPチャンネルFETでは最小ということもあって初段差動アンプの定電流回路に多用された。

ところが、その頃市場に出回っていた2N5465には怪しげなものもあって、特に95年9月号のNo−139では数多くの犠牲者を出したことが伝説として語られている。(^^;;

耐圧不足や中には電極配置が逆のものなど、トンデモナイものも出回っていたらしいが、お陰でモトローラのMのマークの付いた写真のものは“高級品”になってしまった。

が、その2N5465も既にOEMで後ろの3本線はその証という噂もあり、性能はどうだ、音はどうだと多くのDCアンプファンを惑わしたのである。



(01043002)



じゃぁ2N5462ではどうか、という訳で左がモトローラ製2N5462だ。

もともと2N5460から2N5465までは同じファミリーで、2N5460から2N5462までがVds耐圧40V版、2N5463から2N5465まではVds耐圧60V版で、それぞれ順番にIdss=1〜5mA、2〜9mA、4〜16mAで区分したもの。

だから2N5462は2N5465の低耐圧版で他は全く同じだし、当時モトローラの現行品でもあったから、“怪しげで高価”な2N5465より“安くて確か”な2N5462の方が正しい玄人な選択となった。(今は亡きオーテックで厳密なペア品が入手出来たのだが・・・)

確かにこの2N5462の裏には例の3本線はない。(^^)

外見だけでは何も分からんだろ。

とおっしゃる方のために静特性を測ってみた。





(01043003)


Vgs=0VにおけるVds−Id特性だ。比較のために上の2SJ72と左の2SJ103を一緒に測っておいた。図中+910ΩというのはGS間に910Ωの自己バイアス抵抗を入れたもの。

一目瞭然。2N5465、2N5462はうり二つの特性で、J72とJ103の国産グループとは際だって違う特性だ。どちらも本物かどちらもにせものかのどちらかなのだろう(^^;(よく見ると2N5462の方がやや優れているようにも見えるが)

2N5465グループは端的に言って出力インピーダンスが低い。肩特性が実にブロードだとも言うのだろうか。これを0バイアスで定電流回路として使用するには最低Vdsが常に10V以上かかることを前提としないと無理だ。

対して国産の方は3Vもかかっていれば十分だ。特にJ72は1.2Vで既に十分立ち上がっている。左の2SJ103もこの点では優秀だ。同程度のIdになるように2N5465グループのGS間に910Ωの自己バイアス抵抗を入れたものに比較してもJ103単体の方が優れている。

残るは“音”なのだが、高い出力インピーダンスを優先すれば最近の完全対称型FETプリアンプの2段目にはやはり2SJ103だろう。






(01072901)



再度2N5465属(^^;

毎度写りが悪いが、左がモトローラ2N5465、中央がスペースパワー(かな?それともインターシル?どなたかご教授下さい)2N5465A、右がモトローラ2N5462

中央の2N5465AをIZUさんに提供して頂いたので、静特性を測ってみた。
出力インピーダンス(直流で測っているので出力インピーダンスなんて言うのはおこがましいが(^^;)が高い方が良いという目で見れば2N5465Aが最も優れているということになるが・・・

これだけでは分からない。そうですね。取りあえず同じ2N5465でも製造会社が違えば中身もちょっとは違ってくるということでしょうか。

肝心の音はどうか。
詳しい方、どうか教えて下さい。






(010609001)



ちょっと写りが悪いがSONYの2SK43
これがデュアルになったものが2SK97だ。

これも91年9月号のNo−122“オールFETスーパーストレート・プリアンプ”ではじめて採用されたものだが、残念にも耐圧が30Vと低いことが災いして92年6月号のオールFETパワーアンプでその地位を2SK117に奪われてしまい、以来活躍の場をなくしている。





(010609002)



東芝の2SK117

2SK43の地位を奪って以来、カレントミラーや定電流回路、さらに完全対称型プリの終段デバイスとして採用されて現在にいたっている。





(010430004)

(おまけ)
Vgds
(V)
Pd
(mW)
Idss
(mA)
Vgs
(V)
|Yfs|(mS)
min  typ  max
Ciss
(pF)
Crss
(pF)
|Yfs|/Crss(mS/pF) 備 考
2SK30ATM -50 100 0.3〜6.5 -0.4〜-5.0 1.2     4.0 8.2 2.6 1.0   
2Sk246 -50 300 1.2〜14 -0.7〜-6.0 2.3     4.0 9.0 2.5 1.3 J103とコンプリ
2SK117 -50 300 1.2〜14 -0.2〜-1.5 4.0  15 13 3 5   
2SK170 -40 400 2.6〜20        22 30 6 3.6 J74とコンプリ
2SK147 -40 600 5.0〜30 -0.3〜-1.2 30 75 15 2.6 J72とコンプリ
2SK43 -30 300 0.9〜14.3 -0.18〜-1.49 6.3  10.8 14.0 13 2.5 4.5   
FD1840 -50 250 0.5〜5.0     1       3 3.2 1.2 1.6   
2SJ72 25 600 -5.0〜-30 0.3〜2.0 30  40 185 55 0.72 K147とコンプリ
2SJ103 50 300 -1.2〜-14 0.3〜6.0 1.0  4.0 18 3.6 1.1 K246とコンプリ
2SJ74 25 400 -2.6〜-20 0.15〜2.0 8   22 105 32 0.68 K170とコンプリ
2N5465 60 310 -4.0〜-16 1.5〜6.0 2       4 5.0 1.0 4   
2N5462 40 350 -4.0〜-16 1.5〜6.0 2       6 5.0 1.0 6   
2SC1400 85 300 Ic 50 hie 15KΩ hfe 500 33 2.5 13.2   
2SA726 -50 150 Ic 100 hie 15KΩ hie 500 33 3 11   
FE86
(6267)
550 1000 Ip 6.0         2 3.8 0.05 40   
404A
(6R-R8)
180 3000 Ip 35        12.5 3.2 0.04 310   

(010609003)
(おまけその2)
左の回路でゲート漏れ電流を測定した。
と言っても高インピーダンスの電圧計はないので(^^;、SWオン時とオフ時のIdの差で間接的・相対的に計測したもので、Igの絶対値を測定したものではない。

結果は下表のとおりで、なかなかに面白くも悲しい?結果となった。
サンプル数が少ないので結果は断定すべきものではないが・・・時の流れに変化は必然か・・・

2SK30は旧型(とうに市場から消えているのでご心配なく)はIgが多く、いにしえにゲート抵抗220KΩの初期DCアンプに使用する際選別が必須だったことがうなずける。

現行品の2SK30ATMはゲート漏れ電流の点では旧型とは別物であり、Vds=50V、ゲート抵抗820KΩでゲイン26dbのアンプに無選別で起用できる高性能さだ。さらにこの改良版と言われる2SK246も同様に優秀だ。

FD1840,FD1841は期待に反してゲート漏れ電流の点ではごく凡庸な結果だった。

そのほかのK117,170,43,97,245というgmの大きいNチャンネルFETは総じてIgも大きい。

PチャンネルのFETはgmの小さい2N5465、5462、2SJ103のみならずgmの非常に大きい2SJ72(Vdsが低いせいもあるのだろうが)までゲート漏れ電流は僅少である。

特にモトローラ2N5465、5462は実際のところ測定時のSWオフで針の動きが確認できないぐらい(Igほぼ0)。
 

ゲート漏れ電流の間接測定(初段用FETの選別)
   Vdd(V) Id(sw on) Id(sw off)      
FD1840(8351) 48 1 1.070    139(もどき)その2に最初に起用、初段のオフセット調整トリマーで0Vに調整できる範囲
   48 1 1.090      
FD1840(8351) 48 1 2.140    139(もどき)その2に最初に起用、これだと電源電圧に張り付くぐらいのオフセットになる
   48 1 2.190      
FD1840(8525) 48 1 1.190    139(もどき)その2でゲート抵抗75KΩでオフセット300mV程度
   48 1 1.140      
FD1840(8525) 48 1 1.160    139(もどき)その2でゲート抵抗75KΩでオフセット100mV程度
   48 1 1.160      
FD1840(8616) 48 1 1.120    139(もどき)その2でゲート抵抗220KΩでオフセット300mV程度
   48 1 1.125      
FD1840(8616) 48 1 1.050    139(もどき)その2でゲート抵抗220KΩでオフセット100mV程度
   48 1 1.050      
FD1841(9926) 48 1 2.280    幻滅と言うしかない
   48 1 2.280       
FD1840(8001) 48 1 1.060    サンプル追加。こんなものなのかなぁ・・・
   48 1 1.060      
2SK30(旧型) 48 1 1.450    旧2SK30のIgはこんなものだろう。
2SK30(旧型) 48 1 3.000    今回測定したものは全部選別ではじかれるレベルのゲート漏れ電流
2SK30(旧型) 48 1 5.000    合格ラインはId(sw off)=1.1以下か?
2SK30(旧型) 48 1 3.100    したがって、かつては10個に1個合格するものがあれば幸運のレベルだった
2SK30(旧型) 48 1 3.500      
2SK30ATM 48 1 1.020 以下 サンプル数13個。Id(sw off)=1.005程度のものでゲート抵抗820KΩでオフセット50mV位
         1.005 程度のものもあり したがって、どれもゲート抵抗820KΩで実用になる。(ゲート抵抗を220KΩに下げれば全く余裕だ)
2SK117 48 1 4.800    この程度が普通のレベルか?
2SK117 48 1 4.600    この程度が普通のレベルか?
2SK170 38 1 3.300    この程度が普通のレベルか?
2SK170    1 3.500    この程度が普通のレベルか?
2SK246 48 1 1.005    2SK30ATMの改良版?と言われるFETだが、これもゲート漏れ電流のレベルは優秀だ。
2SK246 48 1 1.005    2SK30ATMの代わりに使えそう。BLランクもあるので活用範囲も広まるのではないか。
2SK43 30 1 1.530    耐圧が低いためVds=30Vでのゲート漏れ電流であることを考えると少なくはない。
2SK43 30 1 1.600      
2SK245 30 1 1.470    2Sk245も2SK97も2SK43もデュアル版と思うが、これらも初段に用いるためには
      1 1.470    カスコードアンプを付加してVdsを下げないと使えないレベルのゲート漏れ電流だ。
2SK245 30 1 1.480      
      1 1.470      
2SK97 30 1 2.140      
      1 2.160      
2SK97 30 1 2.330      
      1 2.370      
2SK97 30 1 2.280      
      1 2.310      
2SK97 30 1 2.240      
      1 2.500      
2N5465 48 1 1.005 以下 テスターの針がピクリともしないので正確ではない。ほぼ電流増加なし。
2N5465 48 1 1.005 以下 テスターの針がピクリともしないので正確ではない。ほぼ電流増加なし。
2N5462 38 1 1.005 以下 テスターの針がピクリともしないので正確ではない。ほぼ電流増加なし。
2N5462 38 1 1.005 以下 テスターの針がピクリともしないので正確ではない。ほぼ電流増加なし。
2SJ103 48 1 1.005   優秀!
2SJ103 48 1 1.005      
2SJ72 26 1 1.010    Vdsが耐圧の関係上低いこともあるが、予想外に優秀
2SJ72 26 1 1.010      

(020705001)
(おまけその3)
K式の初段と言えば2SK30&2N3954。というのもようよう過去に属する事柄になりつつあるようだ。

完全対称型式も初段に積極的にゲインを持たせる型式になって、既に2SK170、2SK117が採用されていたが、まあこれらは初段でゲインを稼ぐためにgmが大きくないといけないから・・・と理由付けが可能だった。

が、No−168において遂に2SK246が採用された。
K先生「K246のgmはK30の3倍くらいだ」なんておっしゃっているが、規格表をよく見ると分かるとおり実はこの二つのFETのgmは殆ど同じで差がないのだ。となると何故に2SK246なのか・・・音か(^^;

FETのgmは一定値ではなく一般にIdが増えるほどに大きくなる。規格表のgm典型値はみな同じId値における数値を記載しなければならない・・・なんて決まりはないようなので、結果、gmを素子毎に固有の典型値で比較してみても意味がない。ので、Idを同じ値にしてgmを比較してみた。ついでにK先生のいわゆるQ値(gm/Crss)も求めてみた。

Id= 1mA 5mA
Crss gm Q値 gm Q値
2SK30ATM 2.6 1.5 0.58 3.6 1.38
2SK246 2.5 1.8 0.72 3.7 1.48
2SK117 3 9 3.00 18 6.00
2SK170 6 15 2.50 30 5.00
2SK369 15 20 1.33 40 2.67
2SK214 2.2 10 4.55 27 12.27
2SJ103 3.6 2.5 0.69 4.3 1.19
2SJ74 32 17 0.53 34 1.06
2SJ77 4.8 7 1.46 22 4.58

2SK147、2SJ72は勿論すでにない、のだが、パッケージがTO−92と小さいために許容損失が小さくなっている以外は規格からして中身のチップはK147と同じものではないかと思われるのが2SK369。残念ながらJ72には同様の後継品が見あたらない。
MOSのJ77、K214は友情出演。

結果、Q値ではMOSの2SK214が最良だ。さすがMOSといったところか。が同じMOSでもJ77はそれなり・・・なのはPチャンネルの一般だからやむを得ない。

横型ではやはり2SK117ということになるが、2SK170もgmがK117の倍近くあってのものだから悪くない数値だ。2SK369も実はこんな低いId値でこれだけのHighGmが得られるFETなんて他にないので実に貴重なのだ。

ところで・・・、
ある方からMJ80年6月号に載っているという「音質の最前線探訪 オーディオ用トランジスター、FETの開発とその現状」という記事を教えて頂いた。

それによれば、我が国で最初にFETを商品化したのは東芝で、1964年の2SJ11が第一号だそうだ。さらにオーディオ用としての最初のFETも東芝の2SK17で、1967年頃のことだったらしい。のだが、すぐに耐圧を20Vから50Vにアップし、ノイズも減らした等の改良を加えられた新製品が1968年に登場した、ということで、それが即ち2SK30だ。もう34年も前・・・

う〜ん、そう言えば右のカレンの若々しく爽やかな歌声もかれこれ30年前ではないか・・・と音楽からは実体験の過去が蘇ってくる。彼女がこの世を去ってからももう数十年・・・

時の流れとは恐ろしい。そう言えば、この記事の出ている1980年の段階で2SK30は既に二度のマイナーチェンジを経た後の2SK30ATMになっちゃっていたということなのだが・・・それってそんなに昔のことだったかしらん? と、呑気に馬齢を重ねる我が身のノー天気なこといと恥ずかしや(^^;;

さて、その記事によれば「最近ではK117、K170、K147というように1mAで十数ミリから数十mモーのものが出てきました」とあるので、これらハイGmのFETの登場は70年代後半のことだろうか。は、ともかく、このハイGm化のテクノロジーの説明は興味深い。

「gmというのは、ゲート幅Wとゲート長lとの比とチャンネル濃度Ncに比例するのだが、チャンネル濃度NcはFETの耐圧に影響するので余り上げられない、とすると、ゲート幅Wを増やすかゲート長lを縮めるしかない。のだが、Wを増やしていくとチップサイズが大きくなって結果コストも上がり、CissやCrssなどの寄生容量Cも増加してしまう。じゃあ、といってlを縮めるとドレイン電流Idと印加電圧Vdsの関係が、段々と五極管特性から三極管特性に近づいてきてしまう。」
とあって、ものごとなかなかトレードオフばかりなのだが、そう言う目でこれらFETの規格、特性図を眺めてみると、あらためてなるほど〜と感心しきりになるものだ。(K369などはハイgmなのになかなかのハイ出力インピーダンスだ)

そして、この問題をある程度解決してハイGm化するために東芝で導入したのが“メッシュ・ゲート方式”という新しい手法で、gmの割にはCもドレイン電流のVds依存性も低いFETが可能になったとのこと。
この手法が採用されたのが
2SK147などで、「K147では約600個のゲート・ユニットを、上下左右共交互にドレインとソースが並ぶように配列したもので、斜め方向に並んだドレインやソースを互いに電極で結んでいます」とある。なるほど、2SK147や2SJ72といったハイGmFETは当時それなりにハイテクが導入された製品だった訳だ。
が、これらはもう既にない・・・。
多分同チップと思われる2SK369が生き残っているのがせめてもの救いだ。

さて、この記事の中でゲート漏れ電流についての説明もあった。
それによれば、電子とホールの移動度の差がゲート漏れ電流の電圧依存性を変えている原因で、NチャンネルのFETのゲート漏れ電流の電圧依存性が顕著で、逆にPチャンネルのFETが顕著でないのは、そもそも電子レベルの物性によるものらしい。なので、上でPチャンネルのFETのゲート漏れ電流が僅少で優秀だなどとしたのはものごと知らないが故の感想で、分かっている方からすれば当然のことだった訳だ(^^;

ともかく、
ディスコンにならないことを祈るばかり・・・の愛すべきFETたち・・・