和田山牧場跡( わだやまぼくじょうあと)                    [白山周辺] 1100m

 

  石徹白集落の北側で野伏ヶ岳の東に広がる台地は、かつて牧場に利用されていた。この台地に名前がついているかどうかは知らないが、現在は野伏ヶ岳の登山記録などでは、「和田山牧場跡」と呼ばれているようだ。
 この牧場がいつ開設され、いつから利用されなくなったのかは分からないが、岐阜日日新聞から1975年(昭和50年)に発刊された「ぎふ百山」には「現在、牧場になっており」と書かれているので、まだこの頃は「跡地」にはなっていなかったようだ。

 以前、野伏ヶ岳に登った時にも書いたが、この台地でXCスキーをしようとしたのは1995年 (平成7年)3月のこと。まだ東海北陸自動車道が開通しておらず、石徹白への日帰りなんて考えられなかった時代なので、民宿で一泊して翌日、牧場だったころに使われていたと思われる道路を スキーで登った。しかし、そのときは牧場にたどり着いたとたんに吹雪になってしまい、雪原を歩き回ることはできなかった。

 2004年(平成16年)に野伏ヶ岳に登った時に途中で牧場跡を通過したが、やはり広大な雪原は魅力的だった。「また来よう」と思ったのだが、それから再び10数年。今回やっと念願を果たすことができた。

 前回、野伏ヶ岳に登った時は4月11日だったが、さすがに半月早いとかなり積雪が多い。石徹白川に架かる橋の付近は除雪がされておらず、白山中居神社の駐車場に車を止める。ウィークデイにもかかわらず、7〜8台の車が止まっていて、隣の名古屋ナンバーの車からは、わかんをザックに括り付けた4人組が出発していった。少々時間が遅いが、野伏ヶ岳か薙刀山に登るのだろう。こちら も支度を整えて歩き出す。

 除雪されてるところは道の両側が1.5mくらいの雪の壁になっていて、かなり積もっているのが分かる。じきに雪道になったが、前日まで降っていた雪の状況が分からないので、スキーを担いで歩く。前回、XCスキーで登った時にシールなしでは登りにくかった記憶があるので、出来ればスキーを担いで上まで上がるつもりだったが、雪が深いとそうもいかない。先行のわかん組もつぼ足で登っているようなので、こちらも改めてスキーをザックに付けて登りだす。

石徹白川の架かる橋

 

雪の壁

 

 

 空は青く、絶好の日和で気分はいいのだが、杉林に囲まれた単調な林道歩きが続く。
 ジグザクの林道を所々ショートカットする踏み跡もあるのだが、試しに辿ってみると雪が腐りかけていてももの付け根まで潜ってしまい、仕方なくまた林道を黙々と歩く。わかん組は途中からわかんを付けたようだが、こちらはスキーを履いたままではショートカット の傾斜は登れないので、そのまま担いで上がる。


 

杉林の林道を行く

 

 少々林道歩きに疲れたころ、林道の踏み跡がなくなり、すべての足跡が林の中に続いている。ここからは直登ルートで牧場跡は間近なようだ。

 スキーを担いでいるので、頭上の枝が気になったが、さほど引っかかることもなく快調に高度を稼ぐ。途中から右手に石徹白川対岸の山々が見え始め気分が高まる。分岐から30分弱で牧場の台地の一角に登り着いた。

ここから右の林に入る

 

 牧場跡は雪原が広がり、正面には野伏ヶ岳。そこから右に薙刀山、願教寺山と続き、右手奥に真っ白な別山が鎮座する。さらに二ノ峰、母御石の白い峰が続き、近くに初河山、芦倉山がそびえ、背後に回ると大日ヶ岳が覗き、なおも毘沙門岳、西岳と360度の展望が続く。大展望に一気に気分が高揚する。

 さすがに台地上は弱いながらも風が冷たく、スキーを履きセーターを着て、取りあえずわかんの跡をたどり野伏ヶ岳に向かって進む。
 

野伏ヶ岳(左)と薙刀山

 

最奥が別山(右の円峰は銚子ヶ峰と母御石)

 

初河山(左)と芦倉山

 

一番奥が大日ヶ岳

 

  わかんの跡は薙刀山の方へ続いているようだが、腹が減ったので浅い谷で風を除けて昼飯にする。
 今日はいつものチリトマトヌードルがなかったのでセブンイレブンのしょうゆヌードル。コーヒーも飲んでのんびりする。

 ミズナラの枝の上に頂きを出している野伏ヶ岳を見上げると、やはり4月に来た時よりも積雪が多く白さが目立つ。正面の浅いU字状の谷には小規模な表層雪崩のような跡が見える。
 

今日もカップヌードル

 

 牧場跡まで上がるのに少々時間がかかり、牧場を隅々まで歩く時間は無くなってしまったので、台地の北東の方には行かず、雪原の開けた北西のあたりを散策することにする。
 牧場の中を流れる川は既に雪解けが始まっており、深い谷を作っている。「こんなところに落ち込むと這い上がれないなあ」と恐々覗き込む。一方、地図で池になっているところはまだ雪原で自由に歩くことができる。狭い林間を滑ったり、ミズナラの影を撮ったりして久々のクロカンを楽しむ。

 

ミズナラの影

 

雪解けの川

 

薙刀山
自分のスキーの跡

 

トチノキの冬芽

 

 雪原の上にはやや古いスキーの跡が残るものの、今朝のわかんの跡と野伏ヶ岳に向かうトレース以外に踏み跡はあまりない。昨日までの降雪が人の痕跡を覆い隠してしまったようだ。

 野伏ヶ岳のダイレクト尾根を降りてくる小さな人影が見えるが、駐車場の車の数に見合った人数には見えない。わかん四人組の姿もない。雪原の上には青空と木の影の他の要素はほとんどない。

 と思ったら、トレースの傍の木陰から一人立ち上がって、下山口に向かって歩いて行った。わかんを履いているが、雪が深くて歩きにくそうだ。

野伏ヶ岳を振り返る

 

斜面に落ちる枝の影

 

 牧場南側の山裾を歩き、林道の降り口になる拓牧碑を探すが見当たらない。まだ雪に埋もれているのかもしれない。ダケカンバの枝先に黄色のテープが見つかり、そこが林の切れ目になっていた。かすかにスキーの跡がある。

 下山は林道をスキーで下るのだが、久しぶりなので危なっかしい。固雪と腐った雪がまだらに現れ、何度もこける。往きに林道から分かれた地点までは雪も深く、登るのと同じくらいの時間がかかってしまったが、そこから下は段々慣れてきて、少しは滑りを楽しめるようになった。降雪の後の新雪のおかげであまりスピードが出ないのが幸いだった。最後のヘアピンカーブ付近は傾斜が急な上に雪が溶けかけていたので、スキーを脱いで通過した。

 久々のXCスキーで登りに時間がかかり、牧場まで行きつけないのではとも思ったが、上では気持ちのいい広い雪原を歩くことができ、展望も効いて満足の一日だった。

白山中居神社の駐車場

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[山行日]   2015/3/26(木)
[天気] 快晴    2015年2月の天気図(気象庁)
[アプローチ] 東海北陸自動車道白鳥I.C. →(R156)→ 郡上市前谷 →(県道)→ 石徹白(白山中居神社前駐車場)   [約25km]

・白山中居神社前の駐車場に停車。10数台駐車可。トイレ有り。
[コースタイム]  
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
2:15 10:05 白山中居神社駐車場 出発   5℃
11:35 林道から尾根への取付き    
12:00 牧場跡に上がる    
12:20 昼食 0:40  
0:55 13:00  
13:55 林道下山口(拓牧碑) 0:05  
1:00 14:00  
14:20 林道から尾根への取付き    
15:00  白山中居神社駐車場 到着   全行動時間
4:10     0:45 4:55
 
[地図] 石徹白、二ノ峰(1/25000)
[装備] エッジ付クロスカントリー

 

 [温泉] 満天の湯  
・白鳥高原スキー場入口の向かいにある温泉。
・泉質はぬるっとする“ナトリウム-炭酸水素塩泉”。
・入浴料 800円
・ボディーソープ、シャンプー、ドライアーあり。
・露天風呂の外はウイングヒルズスキー場。もう少し回りの樹が少ないと野伏ヶ岳がよく見えるのに、残念。