栂池自然園(つがいけしぜんえん)     [北アルプス]1980m


 今シーズンは一度もクロカンに行けなかった。仕事の都合もあったのだが、一番の理由は2月末に女房が網膜剥離で入院してしまったからだった。
 昨年のゴールデンウィークはテレマークで乗鞍岳に登ったのだが、今年は体力も気力もない。そんな訳で今年はクロカンでのんびりと栂池自然園に行くことにした。これは病み上がりの女房でも楽に行ける、家庭円満プランである。(と自分では思っている。)

 ペンションのオーナーによれば、今年は3月の末に大雪が降って、例年よりかなり雪が残っているということだ。毎年、ゴールデンウィークまで栂池スキー場は営業しているそうだが、今年も最上部のリフトが3〜4基動いていて、十分滑れる状況だ。麓からのゴンドラを降りた後も、リフトでもうワンピッチ上まで上がれたので、簡単に自然園に向かう林道に取りつくことができた。標高差で100m程、楽した感じだ。

 ゴールデンウィ−ク中続いた天気も下り坂にかかり、鹿島槍、五竜あたりは雲のなかに入ってしまっているがまずますの天気だ。ゴンドラとリフトで上がってきた山スキーヤーやテレマーカーやボーダーなどが、シールで、つぼ足でと思い思いに雪の積もった林道を登っていく。雪は十分締まっていて、つぼ足でもほとんど沈まない。こっちはクロカンなので林道も楽々と歩いていける。一部スキーを脱いでつづら折りの車道をショートカットするところもあるが、そのまま林道を進んでもクロカンならあまり時間的には変わらないみたいだ。
 風がないためか、天狗原にスキーヤーを運ぶヘリが上空を何度も往復している。

 

白馬に向かって栂池自然園を行く 後方が自然園

 

 小一時間でたどり着いた栂池自然園は全くの雪野原。自然園の入り口にある栂池山荘の周辺だけは除雪してあり、深さ2m程の雪の穴になっている。雪原の右手は天狗原から小蓮華へかけての斜面に続いており、なだらかなスロープを見上げていると、氷河で削られたU字谷の底に居るような気分になってくる。正面には逆光に神々しく光る白馬岳。ヘリの爆音さえ無ければ天上の楽園だ。

 下から上がってきたスキーヤーはほとんどが天狗原を目指すので自然園はほとんど人がいない。とりあえず、自然園の向こうの2015mの小ピークまで行けば、白馬岳がもう少し良く見えるだろうと、雪原を進んでみることにした。夏道も木道も全て雪の下で、何も気にせず真っ直ぐに進むことができるので、どんどん白馬が近づいてくる。
 浮島湿原と思われる台地状のところに上がってみると2015mのピークはかなり急であることが分かったので、その左手のこぶを最終地点とした。地形図では1980mの盛り上がりになっている。スキーとスノーシューのグループがいたが、入れ代わりに自然園のほうへ下りていった。
 
白馬大雪渓と白馬岳 針葉樹林を見下ろす

 

 ここまで来ると、てらてらと光った白馬が大きく迫り、白馬大雪渓の全貌が眺められる。自然園の方を振り返れば、雪原と針葉樹林が東山魁夷の描く北欧の絵のように広がっている。うす雲の間から射す温かい日差しを浴びながらのんびりとランチにする。ここまではヘリの音も届かず、時々スキー場の音楽が風に乗って流れてくるだけで静かだ。「至福の時」とはこういうことを言うのだろうか。1時間ほど過ごしたが他には誰も上がってこず、シラビソの梢にホシガラスが現れただけだった。
 
 下りも同じコースを戻る。平らな自然園だけは歩かなければならないが、後は快適な滑降だ。林道も立っているだけで良く滑る。途中で神ノ田圃に寄り、スキー場でボードのエアリアルの大会を見てノンビリとゴンドラまで下った。           
 
自然園へ滑る(後方は乗鞍岳)

アイコンをクリックするとマップがでます。 <白馬岳 (1/25000)>


[山行日]   2000/5/6
[アプローチ] 長野自動車道豊科I.C. →(高瀬川右岸道路)→ 信濃大町 →(R148)→ 白馬村 → 栂池高原 [約55km]
[コースタイム] 林道取り付き (0:55) 栂池自然園入り口 (0:50) 1980mピーク (0:35) 栂池自然園入り口 (0:20) 神ノ田圃 (0:15) ゴンドラ乗り場  (計2:55)
[装備] クロスカントリースキー(エッジ付き)

 

[交通機関] ・ 栂池スキー場ゴンドラリフト「イブ」 栂池高原−栂の森間 往復2500円。
・ リフト(つが第二ペアリフト)片道240円。(つが第一ペアリフトを利用してもOK)
・ 栂池ロープウエイは冬季運休。5月下旬から運行。
 (ゴンドラリフト下の駐車場は駐車料金無料だった。)
[宿] ペンション「かむるーぷす」

・ 落倉高原にあるログハウスのペンション。
・ 部屋が少々狭いのが玉に傷だが、オーナーの作るニジマスの薫製は絶品。
・ XCスキーやスノーシューのレンタルもある。
・ ペンション裏の湿地にミズバショウの群落があり、ちょうど見頃だった。(例年だともう少し早い時期に咲くのかもしれない。)