とはいっても、新しいMacintosh(わーいG3だー)を買ったうれしさから、ついついいろんなソフトを試してみる時間が多くなってしまい、プログラミングの時間が削られていることも事実です。また68KMacのときは、重くてしょうがなかったWEBブラウザがいとも軽々と動くようになり、ネットをうろつく(net surfing)時間も増えたようです。
いいわけはこのぐらいにしておいて(笑)、本題へと行きましょう。前回の雑談で話題にした球面半導体を開発している会社のWEBサイトを久しぶりに訪れたら、日本語による情報が提供されるなど、かなり内容が強化されていました。
その最新の成果によれば、性能評価用のMOSダイオードとPN接合ダイオードを作りこんだボールを作り出すことに成功したとのことで、当初の予定以上に順調に進展しているようすです。
(1)球状のシリコン単結晶の製造方法ですが、free fallによる疑似無重量環境での再結晶だけでは、目的のシリコン球(ボール)を得ることは無理なようです。この後の化学的、機械的研摩によって最終的に真球度の高いボールが製造されるとあります。
(2)リソグラフィーに使われる露光装置はCanonとの共同開発のようです。露光はボールをクリーンパイプから出して、静止した状態で行うとあります。もちろんクリーンパイプ内を非接触で移動させながら、露光させるのが最終目標のようですが、現時点では難しいとあって、より現実的な手法がとられるようです。
(3)ボールの直径が1mmに対しクリーンパイプの内径は2mmだそうです。石英ガラスの管面に接触することなく、エッチングや成膜、拡散などのプロセスを実行することができたとあります。これだけでもスゴイですね。私はなぜか勝手に直径50mmぐらいのパイプを想像していましたが、よく考えてみればこれでは無接触輸送ができるどころか、ボール同士の衝突だっておこしかねませんね。たぶん私のはSF映画かなにかの連想があったのでしょう。
それにしても高さ8メートル近くのパイプがはりめぐらされて、そこから1秒間に2500個の割り合いでICが製造されていく様が現実になったとすれば、これはSF映画を超えていますよね。
電極をつける関係で北極や南極附近には回路が焼かれませんので、表面積のおよそ70%が実際に利用可能な面積になるようです。半径0.5mmの球の表面積のうち、有効面積=4 x 3.14 x 0.5 x 0.5 x 0.7 = 2.2 平方mm ということになります。
(5)直径1mmのボールICの開発に成功したら、次はこれを段々に小さくしていき、最終目標は脳細胞と同じサイズの直径20マイクロメートルのICまで作りたいとのこと。
(6)従来のシリコンチップの場合ならばセラミックかプラスチックのパッケージに封入するのですが、ボールの場合はこれと違って基本的には裸のままで完成品となるようです。これは板と違い球はストレスに強いからと説明されています。もちろん製品を識別するためのカラーリングなどの目的のコーティングをするのは可能だとのこと。そういわれて私は、大学生のときの実験で不注意からシリコン板を割ったことがあるのを思いだしました。球にしたら割れにくいのだろうなあ。
(8)ICの基本特許の「キルビー特許」でも有名な、ジャック・キルビーさんが5月にこの会社を訪れて説明を聞き、「今までに見たことも聞いたこともないアイデアだが、たいへん魅力的な構想だ。商業的に生産するにはまだ大きなハードルはあるが、なんとか超えられるのではないだろうか。」と述べたとされています。
またASCII24によるインタビューはポイントが押さえられていて読みやすいです。
記1998年8月8日