愛情の許容範囲




好きだって言うと、あんたはいつも決まって眉を寄せる。
困ってるみたいな、もしくは怒ってるみたいな顔。
でも、そうじゃないんだっていうのはもう判ってる。

けどそれって、こういう言葉を言われたときの一般的な反応と違くねぇ?
もうちょっと嬉しそうな顔してくれてもいいんじゃないの?
『一般的』なんて言っても、俺は一般な恋愛事情がどういうものかなんてよく判んねぇけど。

親父は小さい頃に出て行き、母さんにもすぐに死なれた。

鋼の、君は幼い頃に両親がいなくなった。親の愛情というものに飢えているんだよ。だからそんなことを言い出すんだ。

あんたは俺をそう『理解』してるみたいだけど。


あんたがそう言うならそうなのかもしれない。
でもそれだけじゃないっていうのがあんたには判らない。
あんたは俺の親じゃないし、そもそもそれこそ『一般的に』親にこんなことやあんなことしねぇだろ。あんた頭いいくせに馬鹿だよね。
人間、そうと思い込んだら認識を変えるのは酷く困難だというのは俺も知ってる。母さんを練成すればまた幸せな日々が戻ってくるって信じてたあの頃の俺が端的なサンプルだ。

それとも。
あんたは誰かの親になりたいのかな。
あんたの大好きな、あんたの親友みたいに。

キスがしたくて顔を近づけるとあんたは黙って眼を伏せるから、その長くて黒い睫にそっと唇で触れた。
親を求める子どもを甘やかしてるつもりなのかと思うとこの上なくムカつくけど、それでもあんたに触りたい欲求の方が強いから俺は黙ってる。
触って、確かめて。
どこまで自分が許されているのか。

あぁ、確かに。
親の愛情を試す子どもみたいだ。
でも好きだと思う相手に、自分がどこまで許容されているのかを知りたいのは親愛も恋愛も一緒なんじゃない?

だから、今はそれでいい。
それに甘んじるしかないってのが正直なところだけど。

それだけじゃ絶対に終わらせないから。










突発作成15分。
もうちょっと甘いヤツを書きたいと、思うことは思ってるんですけどねぇ。おかしいなぁ。