雪下ろし

 立春も過ぎて、日本列島は春に向けて歩み始めただろうか。 しかし、雪国ではまだ春は遠い。
 あるサイトで「どうして雪国では雪下ろしが必要ない家を建てないのか」というスレッドを立てたトピ主が、雪国を知らないくせにと袋叩きにあっていた。スレが挑発的なこともあるが、雪国の困り度も切実なようだ。しかし、雪下ろし事故の話は、近年大雪の年毎に聞かれる事で「またか」という思いもある。

 実は雪国育ちで、三八豪雪も経験している。
 48年前の事だが、2月に入っても雪は降り続いた。家の玄関に雪が吹き付けて、引き戸も開かなくなった。会社から戻れない父に代わって、私は窓から外に出て玄関先の雪を取り除いた。やがて1階の窓は全て屋根から落ちてきた雪に塞がれた。
この大雪を機に、積雪対策が変わったような気がする。尤も、それ以前の事や他の地方の事はあまり知らないのだが。

 先ず道が変わった。主要道路にはヒーターや融雪の散水装置が設置された。散水装置については、特許権を主張する北方の町と論争があったと記憶している。
 昔の屋根瓦には釉薬が塗ってあってピカピカしていた。飾りではなく、雪が滑り落ちやすくする生活の知恵だった。しかし、これ以降に建つ家の屋根には雪止めが付けられて、雪が無秩序に落下しないように対策する家が増えた。ピカピカの屋根も少なくなっていったし、傾斜も緩くなったように思う。人と雪の落下安全対策が優先されたからだろうか。 そして、積雪を考慮して家を建てる間隔が配慮される事も少なくなったようだ。雪を恐れずに克服する方向に考え方が変わっていったのだろう。
一方で、屋根に水配管を施して井戸水を流し、融雪する家も少し見かけるようになった。

 昔はみんな若かった。と言うより、若年層の人口比率が高かったから、年寄りに屋根の雪下ろしをさせる事など思いもよらなかっただろう。
先日のテレビでは、雪下ろしは始めてすぐに事故が起きる事が多いから、「最初は慎重に」なんてことも言っていた。高名の木登りというわけにはいかないようだ。
 関東にいるせいか、対処療法の話しか聞こえてこない。今年はともかくとして、来年の冬までに最低限するべき事はないのだろうか。

 建設現場では少しでも高い所に上るときは安全帯やヘルメットの使用が必須だ。雪下ろしでも安全対策として有効だろう。と言うより、今の時代これなしで作業する事自体が違法だろう。
しかし、安全帯はフックを掛ける相手がないと使えない。屋根のてっぺんのどこに引っ掛けたら良いだろうか。忍者の鉤縄のように、ビューンと投げて反対側の屋根の軒下にでも引掛けられれば良いが、簡単ではない。
 多分、専門業者なら反対側の柱や木を探して固定するのだろう。ボランティアに依頼するにしろ、自分でするにしろ、今の内から固定場所をシミュレーションしておく必要がある。これが最低限度必要だろう。

 建築基準法施行令第86条第6項に「雪下ろしを行う慣習のある地方においては、その地方における垂直積雪量が1メートルを超える場合においても、積雪荷重は、雪下ろしの実況に応じて垂直積雪量を1メートルまで減らして計算することができる。」とある。
 これが諸悪の根源?だろうか。そんな緩和条件で建てられた家に、安全帯を引掛ける設備が付いているのだろうか。雪国で規定がないなら、片手落ちだ。  (2011/2/7)


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