このあとはこの子の何を見限るのだろうかピアノ教室やめる
かたづけのとにかく遅い子をせかす理由が俺を同時にせかす
昇級の下限に俺の上限がもうすぐさわれるはずの七年
あたたかい雨はつづいて七歳のひとりで読める絵本がふえる
知っておけ子よ世界一速いのは光で遅いのは父さんだ
スピーチでそう言っちゃったなんで呼ばれたかわからん結婚式の
好きだよな 今や地球の裏側のことまで知れるのに戦争が
夫にも父にも四十にもなって失くす自信がつぎつぎとある
最後かもしれなかったな遠ざかる車内にしまう父の振る手は
七千円以上のレゴはサンタにもねだれなかったねだらなかった
あきらめる前の世界でビートルズ以前の父と母になりたい
ひとつずつあきらめてゆく坂道で小さくなれば転ばずに済む
やらかした罪悪感がないことに罪悪感があることはある
それでまた怒られている父さんは父さんなのに父さんだから
お待たせし申し訳ございませんとエレベーターが謝っている
そのあとに好きなものだけ残るから嫌いなものを先に食べるよ
パンチの効いた肝臓ですと笑われてエコー画面に脂肪あかるし
俺と地球 万有引力の必然でスマホに落ちた髪が白髪だ
生きるのも死ぬのも後ろめたいとき父さんだって生きてきたから
きっとだめやっぱりだめをくり返しだめではないが俺には似たな
ずっとこわいのかもしれない世界だし夢ができたら相談しよう
打たれても雨にはなれず四十を超えても走るしかないんだよ
反出生主義をいつかは受け入れる俺たちみんな寝たふりで死ぬ
寝たことにしてしなかった返信でいっぱいで大脳が足りない
令和にもなるとブロントサウルスのいない恐竜図鑑ばかりだ
アスパラの豚肉巻きを食べ終えて子の弁当のついでがうまい
近道はないとおまえに言ったから追い越されちゃうときは笑うよ
知っている道に出るとき知っている道はかならず明るい 行くよ
つぶるべき目で読んでいるメールから成功すべき明日をつくる
返信後こわくなるまで俺だってうす暗がりの壁を見ている