吉城園 (よしきえん)
二つの代表的な古都である京都と奈良、京都は「庭」に奈良は「仏像」に見ごたえのある優品が多く残されてますが、別に奈良には庭園が全く無いわけではなく、探せば趣のあるお庭はたんとあります。まあ京都に秀でたお庭が多いのは宗派に因るところがあり、禅宗の臨済宗による枯山水や浄土式の庭園や(南禅寺・天龍寺・龍安寺・大徳寺など)、皇室縁の天台宗の寺院(曼殊院・三千院・青蓮院など)が多いことがその理由。京都よりも古い奈良には鎌倉期以降の新しい宗教である禅宗や、比叡山に遠い天台宗の寺院が少ないことがその一因。
関西の庭園は御大尽の別邸だったものが多く(京都は特に多い)、東大寺南大門隣の依水園と吉城園もそのパターンによるもの。明るく開放的な依水園に比べて吉城園は樹木に覆われた小暗い庭で、隣の依水園よりも訪れる人は少なくて深閑とした佇まいの園内です。
元々は興福寺の塔頭摩尼院だった場所で、明治期に民間の所有になり、現在は奈良県が管理しています。門を潜ってすぐ目に飛びこんで来るのは池と数寄屋風の建築群で、大正年間に造営されたもの。建物の窓ガラスは手で削ってあり、表面が微妙に凹凸をなすので遠景が揺れて見える乙なものです。池の対面の展望のよい高台に東屋があります。
池の庭の奥は緩やかなスロープで一段高くなっており、木立の中に離れの数寄屋風の茶屋と鄙びた茶室が隠されています。
離れの茶屋の眼前は一面の苔庭が広がります。なんでも地下水脈が流れているので杉苔が成育し易く、いつでも青々とした美しい姿を目にすることが出来ます。小暗い木立の中を抜けて開放的なこの苔庭に出た時が、この庭園の最大のハイライトです。
「吉城園」
〒630-8113 奈良県奈良市登大路町60-1
電話番号 0742-22-5911
開館時間 4月〜6月&8月〜12月 AM9:00〜PM5:00
休園日 毎週火曜日 1月〜3月 7月