建仁寺東陽坊 (けんにんじとうようぼう)



 臨済宗建仁寺派大本山建仁寺は、京都五山の第三位に位置する名刹で、開創が鎌倉時代の建仁2年(1202年)、およそ800年もの長さに及ぶ歴史と格式を誇る日本最古の禅寺です。境内は2万3千坪以上の広大な敷地を持ち、方丈・法堂・庫裏・開山堂等の幾多の建造物と、国宝の俵屋宗達画「風神雷神図」を所蔵し、14の塔頭を従える京都でも屈指の大寺です。がその一方で京都市中でも最も賑やかな祗園の南に位置しており、JRAの場外馬券売場も隣にあるほどに煩雑な所で、境内は通り抜け自由の為か、近所のおばちゃん達が散歩したり子供達が遊んだり猫が日向ぼっこしている、そんな庶民的な顔も持ち合わせています。
 この建仁寺を開山した栄西禅師は、中国留学中に茶を持ち帰って日本に茶の湯を広めた功労者でした。禅師縁のこの寺内にも茶室が数多く作られ、特に旧正伝院にあった織田有楽斎好みの国宝「如庵」がつとに名高いのですが、本坊の方丈中庭にも名席の「東陽坊」があります。

 

 この茶室は利休の門弟東陽坊長盛好みといわれ、1587年(天正15年)に秀吉が主催した北野大茶会の時に建てられたものといわれています。その後転々と移転して岡崎の真如堂に置かれ、さらに明治中期に建仁寺開山堂の近くに移され、1924年(大正13年)に現位置に移されました。東陽坊長盛は真如堂の僧侶で、師利休に近い侘び数寄の茶人として知られていました。
 外観は柿葺に軽やかな深い庇が伸ばされた小気味良い平屋建で、庇の左奥に刀掛けが付けられています。躙口は西面南角に開けられ、躙口の上に下地窓、南面中央に連子窓と東角に風炉先窓、東面に色紙窓、そして印象的な大きな丸窓が水屋側に付けられています。

 

 間取りは二畳台目の茶席に一畳の合の間と三畳の控室と水屋とで構成されていて、茶席と合の間との取り合いは二枚の襖を通して行われるので、襖の開け方によって茶道口にも給仕口にもなります。この合の間により、客からは水屋や控室が隠れて直接見えないという巧妙な間取りになっています。躙口から入って正面に中柱と出炉が切られ、左手に台目床が設えてあり、点前の中柱は樫皮付きで二重釣棚が亭主側に作られ、その下に風炉先窓が開けられています。また天井は床前から点前畳にかけては野根板竹竿縁の平天井で、南面の掛込天井には野根板を使わず葦を並べてある珍しいもの。オーソドックスな構成の茶室なのですが、二畳台目の狭さを感じさせない優れた意匠で、ノーブルで端正な品の良い茶席です。

 

 露地には、茶室の西側に繋がるようにして建仁寺垣が設けられています。

 



 「建仁寺」
   〒605-0933 京都府京都市東山区大和小路四条下る小松町
   電話番号 075-561-6363
   拝観時間 AM10:00〜PM4:00