東大総合研究博物館小石川分館 (とうだいそうごうけんきゅうはくぶつかんこいしかわぶんかん)
元小石川養生所だった小石川植物園は、正式名称が「東京大学大学院理学系研究科附属植物園」とある通りに東大の一施設で、教職員や学生達が日夜研究に勤しむ実習所というのが本当の姿。ソメイヨシノも多く花見にもうってつけなのですが、あくまでも研究施設なのでアルコールは御法度の為、カラオケで酔狂する輩はおりません。静かなお花見が楽しめる都心の穴場です。
かつては徳川将軍家の白山御殿の跡地だった場所のようで、そのせいか園内最奥に日本庭園も残されているのですが、その大名庭園の池の畔にひどく場違いな洋風建築が建てられていたりします。これは「旧東京医学校本館」と呼ばれる東大医学部の前身となった建物で、本郷のキャンパス内にあったものを1969年(昭和44年)に当地に移築したのがその経緯。江戸期は医療機関である養生所があった場所なので、関連性があると言えばあると言えるし、何よりも東大創設時から残る生き証人みたいな建物なので、ここで静かに余生を過ごすということになったのでしょう。今では国の重要文化財にも指定されています。
が、21世紀になってからの国立大学の独立行政法人化に伴う改革の波か、明治期の貴重な近代建築を有効利用しようということに方針転換されたようで、今では「東京大学総合研究博物館小石川分館」という名称で博物館施設としての公開事業を始めています。
外側は中央屋根部に時計塔をのせた擬洋風の明治初期らしい近代建築ですが(明治9年完成)、内部を大きくリノベーションしているので柱や天井部の構造体以外は残されておらず、レトロ感は皆無です。デジタルミュージアム化を図っているとかで、あちらこちらにパソコン・ビデオプロジェクタ・モニタが設置されており、室内をインスタレーションしていたりします。
2001年11月に開館していますが、その翌年の2002年12月から2003年3月にかけて、アメリカの現代美術家マーク・ダイオンのプロジェクトによる「驚異の部屋」展が開催されており、その際に東大の保有する膨大な学術標本で建物内部を埋め尽くすというインスタレーションが実施され、その展示状況に多少の変化はあるようですが現在でも常設として「驚異の部屋」展は行われています。
大学構内の片隅に追いやられ顧みられなくなっていた学術廃棄物を、8つのカテゴリー(水圏・地上圏・地下圏・気圏・人間圏・理性と規矩・大きいもの・小さいもの)に再分類し、その夥しい数のアイテムを室内に整然と配置した展示方法で、そもそも見世物博覧会としてスタートした博物館・美術館の歴史自体を再認識させ、そのおどろおどろしい雰囲気はコレクターのグロテスクなまでの異様性をも炙り出しています。
前世紀の埃の被った百科事典的な趣が濃厚なので、建物内部も当初のレトロ感たっぷりのままの方が相乗効果もあって程良くマッチしていたのではないでしょうかね?
「東京大学総合研究博物館小石川分館」
〒112-0001 東京都文京区白山3-7-1
電話番号 03-5777-8600
開館時間 AM10:00〜PM4:30
休館日 月・火・水曜日(祝日は開館)