土岐家住宅洋館 (ときけじゅうたくようかん) 登録有形文化財



 上州沼田の藩主だった土岐家は、明治の御代になって版籍奉還により、当地を離れて東京に住まいを移しました。そのお殿様だった12代藩主頼知公から家督を継いだ次男の章子爵が、1924年(大正13年)渋谷区広尾に自宅としてドイツ風洋館を建て、平成2年8月に沼田市沼田公園内に移築されました。121年ぶりの帰還ということになります。

 

 設計者は伊藤平三郎氏で、外観では玄関部や窓部(屋根窓の「牛の目」)などに当時ドイツで流行していたユーゲントシュテイル(ドイツ版アールヌーボー)に基づくデザインが採用される一方で、2階部にはアメリカンコロニアル調のペンキ塗り下見板張が用いられています。これは様々な様式を取り込んで複合化した、大正期のモダンデザインの一つの表れでしょう。

 

 

 内部は玄関広間の右手に応接間として洋間が設けられ、コーナーには小さな暖炉が設えており、バルコニーに迫り出すような構造から3面よりガラス窓を通して光が差し込む、明るく開放的な空間が作られています。明治期には洋館と和館を別々に配置していたものが、この頃になると内部に洋館部を取り込む構成が採られようになりました。
 この洋間の奥に8畳の和室が廊下を通じて設けられており、またさらにこの和室を挟むようにして中廊下が作られてあります。これは明治末から多く作られた中廊下式住宅と呼ばれる建築様式の名残で、中廊下によって接客空間と私的空間が分けられため、家族のプライバシーが尊重された時代になってきたことの表れでしょう。また玄関広間奥には堅牢な両扉があり、その扉奥に中廊下があるので、なおのことその意味合いが強くなります。

 

 

 2階には1階と同じく洋間と和室と書斎が設けられてあります。和室は奥に上段の間もあるので、まさしくお殿様のライフスタイルがそのまま受け継がれていた模様です。

 



 「旧土岐家住宅洋館」
   
〒378-0042 群馬県沼田市西倉内町594(沼田公園内)
   電話番号 0278-23-4766
   入館時間 AM9:00〜PM4:00
   休館日 毎週水曜日 国民の祝日の翌日 年末年始