住吉大社 (すみよしたいしゃ) 国宝



 通天閣のお膝元にある恵美須町と、クラシックな海水浴場だった浜寺公園を結ぶのが、大阪唯一の路面電車である阪堺電車。その本線である阪堺線と支線の天王寺駅始発上町線が合流するのが住吉駅で、上町線は次の住吉公園駅が終点。その住吉公園駅と南海本線住吉大社駅は隣り合い、そこから東へ50m程の距離で阪堺線の住吉鳥居駅もあります。住吉駅も北へ100m程しか離れておらず、つまりこの界隈は異様に駅が密集しており、それだけ住吉大社への参拝客が多いということなのでしょう。全国でも有数の初詣客の多さを誇るお社ですが、最近では関西屈指のパワースポットとメディアで取り上げられることもあり、若い女性の参拝も増加中のようです。

 

 住吉大社は、「日本書紀」によると神功皇后の新羅出兵に際して託宣があり、住吉大神を祀ったのが創建の謂れだそうで、古来航海の安全を祈願する神として広く親しまれてきた神社です。いまでは大阪港は安治川の河口に移りましたが、かつては上町台地の西側は崖のため港には不向きで、その台地の南端にあたりなだらかな砂浜を持つ当地が港湾都市として栄えていたようです。「すみよい」から住吉と命名されたように白砂青松が広がる風光明媚な土地で、万葉集にもその絵画的な風景が歌に詠まれ、遣唐使もこの地から出港していた模様。以前は海岸線が住吉大社の鳥居前まで広がっていたようで、出港前は必ずこの大社に海上の無事を祈って出帆したようです。
 その美しい浜辺に造られたこの神社は、海が西側にある為に西向きに境内が配置されており、南向きが多い中では珍しいパターン。参道を東に向かい、最初の鳥居を潜ると、丹塗りの反橋がお目見え。この反橋は横から見ると美しい半月状になっており、水面に映る姿を合わせると太鼓のように見えることから太鼓橋とも呼ばれています。慶長年間に淀君が奉建したそうなのですが、当然今では代変わりしています。ここがまず最初のパワースポットだとか。

 

 この反橋を渡るとすぐ石造りの鳥居があり、その奥の「幸寿門」と呼ばれる門を潜ると社殿の前へ至ります。この鳥居は四角柱で組まれており、古い様式で造られた珍しいもので、住吉鳥居と呼ばれています。この鳥居を裏から振り返ってみると反橋の奥には松並木の参道が続き、その向こうに大海原が広がる美しい光景が眺められたのでしょうが、今では埋め立てられて何一つ見えません。

 

 

 この住吉大社は、「底筒男命」「中筒男命」「表筒男命」「息長足姫命」の4人を祭神とする神社なので、それぞれを祀った社殿が計四つ並びます。まず境内最奥の東側に第一本殿が西向きに置かれ、東西を中心軸として第二本殿・第三本殿が海に向かって直列に並び、第三本殿の南側に第四本殿が並ぶ配置構成となります。ちなみにこの第四本殿は「息長足姫命」(神功皇后)を祀っており、住吉大神である「底筒男命」「中筒男命」「表筒男命」とは別個の扱いとなる為に、中心軸からは外れているようです。
 各本殿は軸部の丹塗りの赤色と壁の胡粉塗りの白色に、屋根の黒色とがそれぞれ鮮やかなコントラストを浮き立たせており、整然と並ぶ姿は大海に漕ぎ出す船を思わせるもので、さしずめ瀬戸内海を中心とする交易により絶大な権力を得て、その瀬戸内海の西の端である壇ノ浦で滅亡した平家の巨大船団を彷彿とさせるものがあります。

 

 各本殿は住吉造と呼ばれる社殿様式で建造されており、この住吉大社のがそのプロトタイプ。伊勢神宮の神明造や出雲大社の大社造と並ぶ最もベーシックな形式で、屋根は檜皮葺の切妻に出入り口を妻入りとし、正面2間側面4間の大きさに、内部は前後に2室配置するのが大まかな概要。周囲に高欄や縁側は付かず、丹塗りの玉垣と瑞垣が二重に取り巻きます。また柱上は組物が無く木割は太く、棟上に装飾として横に堅魚木を5本並べ、両端に2本の交差する置千木と呼ばれる妻飾りを立てます。
 神社建築の最も原始的な姿を残し、シンプルでありながら太古性・神秘性を漂わせており、その彩色の面も含めて最も均等のとれた美しい社殿の一つです。
 平安期から弐年遷宮として伊勢神宮と同様に建て替えられていましたが、室町期に戦乱等により廃絶され、17世紀に復活されて現在のものは江戸後期の1810年(文化7年)に建造されたものです。4つとも国宝に指定されています。

 

 妻両端にのる置千木は第一本殿から第三本殿までは上部が縦に切れていますが、第四本殿のみは横に切れています。これは第一から第三までは男性を表し、第四は女性を表現しているからとか。縦切れは切っ先が鋭く、横切れは大人しくなるので、そのあたりで男女を表現されているようなのですが、実は反対なのではないか?とのツッコミも入るようです。

 

 各本殿は渡殿を介して横長の拝殿と繋がります。こちらも切妻屋根の檜皮葺による建物ですが平入りとなり、正面に向拝が取りつきその上が破風屋根になります。正面から見ると、ごく普通の社殿にしか見えません。この拝殿が当初からあったものかは不明。

 

 第一本殿のすぐ南側に五所御前があり、神功皇后がこの地に住吉大社を祀る謂れとなった場所だとか。ここの玉砂利には「五・大・力」と文字が書かれており、この3つの小石を集めてお守りにすると心願成就されるという話だそうです。パワースポットとなっているようで、若い女性の参拝が絶えません。
 さらにその南側には東西に池が広がり、その中央に石舞台が造られてあります。神事の奉納の際に舞楽が舞われる場所で、この南側に東西の楽所と南門があり、セットで国の重要文化財の指定も受けています。毎年5月の卯之葉神事の際に舞われる模様。
 西池の畔には神館と斎館が並びます。大正天皇の即位記念として建設されたもので、大型の近代和風住宅建築。国の登録有形文化財指定。

 



 「住吉大社」
   〒558-0045 大阪府大阪市住吉区住吉2丁目9-89
   電話番号 06-6672-0753
   参拝時間 
4月〜9月 AM6:00〜PM5:00
          10月〜3月 AM6:30〜PM5:00