白駒池・雨池 (しらこまいけ・あめいけ)



 八ヶ岳は厳密に呼ぶと硫黄岳から編笠山にかけての八つの高峰を指すそうで、夏沢峠から北側は”北八ヶ岳”という名の別の山域と見なすことも出来るそうです。確かに南部は峻厳な岩山群で、上級者向きのコースもあるアルペンムード漂う山域ですが、北部は亜高山の針葉樹林帯に池塘が点在する高原となり、静かな森の散策がメインの山歩きビギナー向けの山域です。まあ別荘地の蓼科高原はその一部とも言えるので、手軽に山の魅力に触れるには打ってつけの場所でもあります。
 この北八ヶ岳はそのド真ん中を国道299号線(メルヘン街道)が貫いていて、標高2120mの麦草峠を中心としてコースが縦横に張り巡らせてあり、また周囲の森の中には池や湿原・草原・展望台とバラエティに富んだビュースポットが点在しているので、この麦草峠を基点として様々なルートを採ることが可能です。シーズンになればバスも運行していますし、車でならば無料駐車場もありますしね。
 気持ちの良い草原の広がる麦草峠から、南東へ森の中をほぼ平坦なコースで30分程進むと、白駒池の畔にポンと出ます。すぐ近くを国道299号線が走り、有料駐車場もあるのでちょっと観光客の多いスポットでもあります。

 

 白駒池は北八ッで一番大きな池で、標高2115m面積114300u水深8.6mからなる紺碧の美しい山上湖。人造湖ではありません。周囲を鬱蒼とした針葉樹林帯に囲まれており、池面の深い群青色がとても映えて神秘的です。秋になると池岸のサラサドウダンツツジやナナカマドが紅葉し、その美しさもひとしお。

 

 池の周囲は遊歩道になり、苔むした樹林帯の中を木道が走ります。麦草峠とは反対側の方向に白駒林道と呼ばれる登山道が枝分かれし、佐久側の稲子湯へと抜けられるのですが、このルートが中々お薦めで、池を離れると程無く森の中にポッカリと開けた湿原に出ます。湿原の端を木道で通過するとあたりはコメツガやシラビソが隙間なく生え、林床を苔シダ類がびっしりと覆い尽くすあまり陽の差さない仄暗い森の中へと入ります。このあたりが北八ヶ岳で一番美しい森の見られる場所。やがて南へ分岐路が現れ、一登りすると「にゅう」と呼ばれるちょっとした岩のピークに出ます。八ヶ岳周辺が一望できる展望台の様なスポットで、原生林に覆われた真っ青な白駒池の姿も眺められます。

 

 

 麦草峠から北へ進むルートはすぐ二手に分かれ、直進すると茶臼山から縞枯山・北横岳へと辿る稜線ルートですが、右に折れると縞枯山を遠巻きに笹原を進むバイパスルートとなります。縞枯山は山腹に針葉樹林が縞状に立ち枯れる縞枯現象が見られる不思議な山で、このルートはアップダウンが激しいです。
 バイパスルートはゆるゆると樹林帯と笹原を下降していくコースで、やがて車道の大石川林道に出てしばらくこの車両通行止めの林道を進みます。程無く右手に雨池への標導が現れ右折するとそこは雨池の岸辺。雨池は池の多い北八ヶ岳でも白駒池に次ぐ二番目の大きさを持ちますが、とても水深が浅いので渇水期にはただの窪地となってしまう大きな水たまりの様な池で、神秘的な白駒池とは対照的なとても明るい開放的な風景が広がります。このまま麦草峠へ戻るも良いし、大石川林道を先に進み、雨池峠を乗越してピラタス横岳ロープウェイで下界へ帰るも良しと、色々とルートが選べるエリアです。