新日暮亭 (しんひぐらしてい)



 特別名勝栗林公園には大小様々な6つの池が点在しており、その中で一番西側に位置するのが西湖。南北に細長い形状からか池というよりは広めの川といった感じで、他の池が開けた地形に伸びやかで明るい景色を見せるのに対して、この西湖は紫雲寺の麓にありしかも対岸は絶壁が連なるせいか、神秘的でやや暗い印象があります。
 特に三国志でも知られる中国揚子江の赤壁を模した石壁周辺がその傾向が強い所で、大名庭園は小石川後楽園や縮景園のように中国趣味が加味されることが多いらしく、この栗林公園でも南湖の偃月橋も含めて中国様式がそこかしこに見られるようです。その赤壁の対岸の畔に新日暮亭という茶室がポツンと佇んでいます。

 

 この新日暮亭は、1700年頃に南湖の東南隅(今の吹上亭あたり)に「考槃亭(こうはんてい)」として造られた草庵風の茶室で、その後に西湖の畔の会僊厳(かいせんがん)に移築されて「日暮亭」と改名し、さらに1871年(明治4年)に園外の私人宅へ売却されて転々とし、ようやく1945年(昭和20年)に再び園内に戻ったという流転の多い歴史があります。
 何故名前に「新」が付けられているかというと、園外へ出ていた明治期に新たに園内に日暮亭という名で茶屋が出来た為で、本家本元の日暮亭はこちら。扁額にも「日暮亭」と書かれています。屋根が入母屋造りの茅葺で、床面積が21.46u。

 

 北西隅に貴人口が北側と西側にあり、京都仁和寺の飛濤亭と同じスタイル。正面から見る姿は似ています(左右逆)。内部は三畳と同じ広さの土間が並ぶ構成で、床や中柱・中板も無く天井は杉皮を張った屋根裏をそのまま見せています。三畳間が藩主の座る上席で、土間は家来が床几を使って茶立てを執り行っていたのでしょう。
 いわゆる茶室というよりは風景を愉しむ為の東屋みたいなものらしく、茶室としての意匠はあまり考慮されておらず、貴人口を開けると対岸の赤壁が正面に見えるので、それを意図されて移築されたのでは。土間がある茶室というと桂離宮の月波楼がありますが、やはり外の風景を愉しむ為の茶屋で、同様に簡素な東屋風の意匠です。

  

 

 隣には1945年に水屋が増築されています。武者小路千家の家元の手によるものだとかで、丸炉があるのでここでも茶事が出来るようです。

 

 露地には待合もあり、流水には降蹲踞も設置されています。

 

 で明治期に新築された「日暮亭」は現在茶店として営業中。ガラス窓も入った近代和風建築の茶屋。

 



 「新日暮亭」
   〒760-0073 香川県高松市栗林町1-20-16
   電話番号 087-833-7411
   開園時間 12・1月 AM7:00〜PM5:00
          2月 AM7:00〜PM5:30
          3月 AM6:30〜PM6:00
          4・5・9月 AM5:30〜PM6:30
          6・7・8月 AM5:30〜PM7:00
          10月 AM6:00〜PM5:30
          11月 AM6:30〜PM5:00
   休園日 年中無休