明治生命館 (めいじせいめいかん) 重要文化財



 丸の内のオフィスビル群も、丸ビルの解体によって戦前から残る物件は、御濠端の第一生命ビルと明治生命館ぐらいになってしまいました。クールでソリッドなマスクのモダンな第一生命ビルに対して、アテネのパルテノン神殿を連想させるヨーロピアンクラシックの風貌を持つ明治生命館は、明治期から導入された西洋古典様式による建造物としての棹尾を飾る最高峰であり到達点とも呼ばれるビルで、1997年(平成9年)に昭和期の建造物としては初めて、国の重要文化財に指定されました。現在は明治安田生命の丸の内お客様相談センターとして営業を続けており、休業日の土日に無料で内部公開されています。

 

 皇居の御堀端に一際秀麗な姿を浮かび上がらせるこの明治生命館は、1930年(昭和5年)9月に着工し3年7ヶ月を要して1934年(昭和9年)3月に竣工されたもので、設計は鳩山邸や歌舞伎座などで「洋式建築の鬼」と呼ばれた岡田信一郎。岡田は着工直後に病床に臥せ、2年後の1932年(昭和7年)に急逝、その後は弟が遺志を継ぎ完成させました。建物は鉄骨鉄筋コンクリート造の地上8階地下2階建てで、大きな特徴である外観は古典主義様式と呼ばれる伝統的なスタイルを持ち、下層に粗石積みの基壇階(グランドフロア)・列柱の連なる主階(ピアノノービレ)・上層階(アティックストーリー)の三層構造からなる、このタイプのものとしては正統的な造り。巨大なコリント式の列柱を並べたり、柱頭部にアカンサス(葉アザミ)の葉飾りを施すなど、装飾性の豊かな美しい姿を見せています。列柱はエンタシスと呼ばれる中間部に微妙な膨らみがあり、視角矯正の為に施されたもので、奈良の唐招提寺の金堂にも用いられています。

 

 

 内部は1階と2階の中央部が広く吹き抜けとなり、重量感溢れる骨太な大理石の角柱が林立する、壮麗な大空間が造られています。ローマ・ギリシャの宮殿や聖堂を髣髴とさせる荘厳性が感じられます。
 装飾の豊かなことも特筆すべきことで、天井は漆喰と石膏の彫刻に縁取られ、八角形の窪み(コファリング)と優雅な丸い花飾り(ロゼット)が施されています。また角柱の頭部にも美しい彫刻が施されています。

 

 

 二階の吹き抜けには回廊があり、それぞれ応接室・執務室・会議室・食堂などが並びます。一階の吹き抜け部と異なり各室は木材を多用した暖かみのある落着いた意匠で、大空間とのコントラストを与えています。応接室はスパニッシュスタイルと呼ばれる明るく典雅な部屋で、凹凸の白漆喰壁に木梁天井、金属製の装飾や菱格子のステンドグラスなどにその特徴が現れています。

 

 応接室に隣接して執務室があり、こちらは応接室と異なり木製パネルを嵌めた穏やかなシックな空間。
 それに対して食堂は天井に三心アーチと呼ばれる緩やかなカーブを描く梁が渡されており、柔らかい印象を室内に与えています。天井や梁の石膏レリーフには葡萄の唐草のデザインが施されています。

 

 



 「明治生命館」
   〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-1-1
   電話番号 03-3283-9252
   入館時間 土日 AM11:00〜PM5:00
   休館日 12月31日〜1月3日