観音院 (かんのんいん) 名勝
鳥取の地名の由来は、今の鳥取市の中心部が沼地で狩猟場だったことから。戦国期に開かれた鳥取城もこの沼地の畔の久松山にあり、当時の城下町もこの山の麓に広がっていました。江戸期の開拓事業により今に残る鳥取市街の区割りが完成したわけですが、由緒正しき神社仏閣等の旧跡はこの市東部に広がる久松山一帯に集中して数多く残ります。
JR鳥取駅の東方1km程の距離に位置する観音院もその久松山の麓に残る寺院の一つで、美しい庭園を持つことで知られるお寺。境内は傾斜地でなだらかな坂道の参道を登って山門を潜ると、背後に久松山が優美な稜線を描いて正面に本堂と庫裏が現れます。この稜線がポイント。
縁起によると岡山藩主だった池田忠雄が江戸初期にお国替えによって当地に赴いた際に、随伴した岡山光珍寺の宣伝法印が開山した寺院で、1639年(寛永16年)頃に当地に移されています。宗派は天台宗。
庭園は庫裏の裏側の書院の東側に広がっており、書院の中から眺める池泉観賞式のもの。縁側の近くまで広い池を造りその周囲に築山を盛った構成で、築山にはあまり樹木を植えず芝生を中心とする空間の広がりを強く意識させたお庭です。書院の縁側で見るよりも座敷の奥に座って見ると、視点のおさまりが良いようですね。
この庭の魅力はそのロケーションにあるようで、久松山から連なる山稜が鞍部となる箇所と、その鞍部から派生する谷合の開けた場所にこの寺を開いており、池の向こうの谷奥に見える久松山の稜線と、周囲の広がる深い原生林を借景としています。手前の池自体の石組もさりげないものなので、街中の寺社の庭園というよりは、どこか山中に広がる池の畔にでもいるようです。ハイキングコースの途中に森の中の池にポンと出たような気分。
確かに宗教臭さは希薄ですし、この時期に多く造られた池泉回遊式の大名庭園とも異なる内容ですが、それでもそれなりに石組には工夫があるようで、大きな亀首の亀島や夜泊石もあります。池の一番南側の畔には姿の良い切支丹燈籠も置かれています。但し風景の邪魔をせずにあくまでもアクセントとなる程度に。国名勝指定。
お抹茶の接待もありますので、座敷に座って静かな時間が過ごせます。
「観音院」
〒680-0015 鳥取県鳥取市上町162
電話番号 0857-24-5641
拝観時間 AM9:00〜PM5:00 年中無休