兵庫県公館 (ひょうごけんこうかん) 登録有形文化財
神戸のJR元町駅を降りて駅前の生田中学の角を北へ曲がると、その道の突き当たり正面に大きな洋風建築が御目見えします。これは兵庫県公館と呼ばれる公共施設で、以前の兵庫県庁だった建物。今は会議場やら県政資料館として使用されており、土曜日のみで内部の迎賓館部門を無料で公開しています。ちなみにこの建物、正面と背面のマスクが全く異なり、正面は車寄せも付いた洒落たおフランス風の顔立ちですが、背面は重厚で機能優先の官僚的な顔付き。この正面側が迎賓館部門用の出入口で、背面は県政資料館部門用の出入口となっており、その役割に応じた二面性の建物だったりします。
この兵庫県公館は、19世紀末の1899年(明治32年)に兵庫県本庁舎として着工し、20世紀初頭の1902年(明治35年)に竣工した世紀を跨いで建造された大規模洋風建築で、建築面積は4519uあります。外観は屋根がスレート葺と銅板葺に、煉瓦造りを鉄筋コンクリートで補強した3階建て。平面で見るとロの字型で中心部が中庭となっており、その周囲を回廊のように廊下と各部屋が並びますが、この中庭は2階の屋根に設えられた屋上庭園となっており、その下は大会議室として貸出中。
設計を担当したのは元文部省建設課長だった山口半六。明治の初めにフランスに留学して欧州の土木建築の基本を叩き込まれ、帰国後は文部省入省後に上野公園内に移築された旧東京音楽学校奏楽堂(国重文)や、金沢の旧制四中と熊本の旧制五中の校舎(いずれも国重文)等の優れた学校建築を手掛けて活躍しましたが結核に冒され退官し、神戸の舞子で静養しながら設計を続けていたさなか、この兵庫県庁舎の建設工事中に逝去しました。享年43歳。戦前の日本におけるフランス建築の代表的な建築家で、この建物もフランス風のネオバロック様式で建造されており、特に正面のカマボコ型のマンサード屋根にその特徴がよく出ていますが、壮麗な建物になりがちなネオバロック様式にしては比較的装飾性が弱く、全体に穏やかで柔らかい印象の建物となっています。文部省で学校建築を多く手掛けたことからか、無闇に華美に走るのを嫌ったようで、機能性も兼ね備えた落ち着いた優美な外観です。
この建物は第二次大戦の神戸空襲により内部を消失しており、建築当時の箇所は外壁のみ。そのせいか他の山口半六の作品は国重文となっていますが、ここだけ国の登録有形文化財の指定。戦後は1966年(昭和41年)まで県庁舎として使用されていましたが、1985年(昭和60年)に迎賓館として改修工事を行い、鉄筋コンクリートで構造補強をし、内部の意匠を竣工当時に復元してあります。皇室の方々を迎える貴賓室や応接室に知事室等が復元されています。
「兵庫県公館」
〒650-8567 兵庫県神戸市中央区下山手通4-4-1
電話番号 078-341-7711
開館時間 迎賓館部門 土曜日AM10:00〜PM4:00