妙法寺 (みょうほうじ)
「堀之内のおそっさま」と呼ばれ、毎年秋のお会式には全国から数多くの参拝者が訪れる、杉並堀之内の日蓮宗本山妙法寺。落語「堀之内」にも登場するほどに江戸期から庶民には厄除けの寺として親しまれてきました。建立してから三百数十年もの歴史を誇ることもあり、広い境内には本堂・祖師堂・仁王門・日朝堂・二十三夜堂など幾多の諸堂が点在する、壮大な伽藍を要しています。大玄関前の鉄門はジョサイア・コンドル設計による鉄製の和洋折衷様式の門。寺院には珍しい意匠で、国の重要文化財指定。境内で一番大きな建物の祖師堂には、日蓮上人の「祖師御尊像」を祀ってあり、これが「おそっさま」と呼ばれて厄除けあらたかとして信仰を集めています。
広い境内の一番奥に墓地があります。墓地を隔てる石塀を出て、木立の続く参道を抜けると右手に菖蒲畑が広がる田園の光景。抹香臭さが幾分和らぎます。さてこの菖蒲畑の向こうに、昭和を代表する大エンターティナー国民的大歌手、三波春夫の墓所があります。
三波春夫、本名「北詰文司」。戦前から活躍する浪曲師でしたが、第二次世界大戦中にシベリア抑留を経て戦後再出発して以降は、戦火にまみれた国土と荒廃した人心に勇気を与えるべく、その自慢の美声で一般庶民に応援歌を送り続けました。その天真爛漫な歌声と姿勢は、ややもすると安っぽい薄っぺらな大きな張りぼてみたいなものだと揶揄する向きもありますが、自分自身の艱難辛苦を微塵にも感じさせずにあそこまでサービス精神にのっとり、常に大衆に向けて良質の歌謡曲を送り続けエネルギッシュに活動し、そして最後に病魔に苦しんでいることを悟られずに潔く死を迎える、その人間性も含めてスケールの豊かな偉大な歌手でした。2001年(平成13年)4月14日永眠。
三波春夫のヒット曲といえば「チャンチキおけさ」に「雪の渡り鳥」、それと「東京五輪音頭」「世界の国からこんにちは」で国民的歌手と呼ばれるようになりました。わりとなんでもトライすることがお好きなようで、アニメ「ルパン三世」に声優で出演し「ルパン音頭/銭形マーチ」も発表。ロックミュージシャンをバックに従え「おまんた囃子」も発表。色んな意味で大きな話題になりました。ちなみに「おまんた」とは新潟弁で「おまえさん」の意味。
そういえば山下達郎氏が「俵星玄蕃」を”永遠の名曲”としてフェヴァリットソングに挙げていますが、たしかにあの大きく伸び上がる張りと艶のある歌い方は、共通したものがあるかもしれません。
墓地内の花菖蒲は10年ほど前に妙法寺門前の商店街のメンバーが植えたもの。約1000株ほどあります。このお寺は文学者とも縁が深く、林芙美子が近在に暮らしていたり、やはり近くに住んでいた有吉佐和子もよく散歩に訪れた模様。境内墓所に行く道脇に文学碑があります。
「妙法寺」
〒166-0013 東京都杉並区堀ノ内3-48-8
電話番号 03-3313-6241
FAX番号 03-3313-5007
拝観時間 (3月21日〜9月22日) AM5:30〜PM5:00
(9月23日〜3月20日) AM6:00〜PM4:30