京都平安ホテル (きょうとへいあんホテル)
京都で宿を取るとなると中々に費用がかかり、しかも中には「一見さんお断り」と敷居のとても高い旅館もあったりしますから、フリーの旅行者にはちょっとハードル高めです。そんな京都でも比較的リーズナブルに宿泊できるのが公共の宿の良い所で、特に「京都ガーデンパレス」や「京都平安ホテル」は京都御苑に隣接する緑の多い環境で設備も良く、とても公共の宿とバカに出来たものではありません。市中心地の宿としてはお値段もロープライスですしね。このうち平安ホテルの方は庭園も素晴らしく、別に泊まらなくてもカフェ利用で見学ができるのでとてもお薦め。
この界隈は御所近辺の公家屋敷が建ち並んでいた場所で、平安ホテルの敷地は幕末の慶応年間には「醍醐家」の御屋敷があったとのこと。なんでも公家の世界では上の下に位置するそうです。今に見られる庭園はその当時のものではなく、大正期に植治こと七代目小川治兵衛によって改修されたもの。無鄰庵・對龍山荘・碧雲荘・何有荘等の市内の名立たる名園を次々と造営した植治が関わった作品の一つで、全体のアウトラインが公家屋敷の頃の、一つ一つの細かいディティールが植治独特の手法が合体した構成となっています。
その植治独特の手法と言えば水流と石。「水と石の魔術師」と異名をとった様に繊細な水の表現手法はここでも随所に展開されており、二段構成の滝組も決して豪快なものではなく、あくまでも静かに低く落として優美に見せています。
また石の多様性も特徴の一つで、特に園内で一際目立つ二枚の石橋は白川石を用いたもの。桂離宮松琴亭前のと同じですね。また山型が特徴的な加茂石や沓脱石として赤い鞍馬石、それに寺社に使われていた伽藍石などが点在して置かれています。
同様に石燈籠も数多く置かれており、全部で15基ほど。特に池の畔に立つ雪見燈籠が印象的です。
池を挟んでレストランの対面にあるのが四阿。「龍鱗」と名付けられた茶屋で、軒の扁額は裏千家第十二代淡々斎宗室の手によるものです。水屋もありますから当然茶事も可能で、立礼式で風景を楽しみながら一服点てるのでしょうね。