西田家玉泉園 (にしだけぎょくせんえん)
加賀百万石の前田家は、利休や古田織部といった大茶人に師事した茶の湯に造詣の深い家柄で、そのお膝元である金沢も、前田家の財力により京より茶人が多く訪れ、洗練された京文化を伝えて江戸期より茶の湯が盛んに嗜まれました。茶室・茶道具・茶菓子などに見るべきものの多い町で、特に茶室には名品とも呼ぶべき優れたものが遺されています。成巽閣の清香軒と加賀温泉にある江沼神社の長流亭は国の重要文化財に指定され、兼六園の夕顔亭は県の重要文化財に指定されていますが、兼六園隣の西田家庭園玉泉園にも茶室があり、その中で「灑雪亭」は市内最古の茶室です。
この玉泉園は代々加賀藩の馬廻組頭等を勤めていた脇田家の屋敷跡で、加賀二代目藩主前田利長の令室「玉泉院」にちなんで名付けられました。敷地は約720坪の地泉回遊式の庭園で、初代直賢から四代九兵衛にかけて造営され江戸中期に今の概要になり、明治期の1905年(明治38年)に西田家が所有して今に至ります。
園内は上下二段式に造営され、上段に灑雪亭露地があります。灑雪亭は加賀二代目藩主前田利常の招きで金沢に来訪した利休の曾孫である千仙叟宗室(裏千家の開祖)の指導により建てられた、17世紀中頃に建造された築300年以上の茶室です。間取りは1畳に台目二畳の前板向切と狭く、床は松の蹴込床となり床柱は赤松丸柱を用いた、檜などの高価な材料を使わない非常に簡素な意匠。利休直系の仙叟宗室らしい侘びの境地を表現しています。
この灑雪亭露地はこの玉泉園で最も古くから造営された場所で、茶室同様に仙叟宗室の指導によるもの。中央に池があり、ここの水は兼六園内のことじ灯籠手前の曲水に設けられた取水口から、段差を利用して流入しています。
下段は上段の池から滝組を経て水を引いた「水」の字形の池を中心とした本庭と、その庭園に佇む書院風の離れの構成。この離れも築200年は経つ18世紀の建造で、四代目九兵衛が建てさせました。ここにも茶室があり、東庭から中門を潜って本庭内に入り飛び石伝いに露地を進みます。
茶室は「寒雲亭」の写しの席で、京都裏千家の家元にある名席の模写です。二代目・三代目が仙叟宗室に師事したことから四代目が作らせたもので、間取りが八畳に一間の本床と付書院に貴人口で構成された書院風の茶室。寒雲亭は宗室の父である宗旦が居間兼用に造った茶室なので、この写しの間も風雅な御座敷といった趣です。正確な写しが施されていて、床の間両脇の狩野探幽筆の襖絵もそっくり模写されています。この離れから見る本庭は、端正で落着いた風情。
園内は灯籠や手水・井筒が点在しており、中には越前松平家縁の由緒正しき物も置かれています。また当主が朝鮮出身ということもあって、朝鮮より渡来の石や松も移築されています。
「西田家庭園玉泉園」
〒920-0932 石川県金沢市少将町8-3
電話番号 076-221-0181
FAX番号 076-221-0381
開館時間 AM9:00〜PM4:00
休館日 12月初旬〜3月初旬