源兵衛川 (げんべえがわ)
新幹線も停まる三島駅の真ん前に、楽寿園という広い公園があります。元々は皇族の小松宮の別邸だった場所で、今は三島市が管理公開している市民公園なのですが、ちょっとばかりユニークな内容を持っており、楽寿館と呼ばれる数寄屋造りの御屋敷とその周辺に広がる国名勝指定の池泉回遊式の庭園をメインに、回転木馬と豆汽車によるミニ遊園地、猿やポニーにアルパカ・カピバラ・レッサーパンダが飼育された小動物園、郷土資料館に果てはC58とSLまである複合型の公園です。宮様の御屋敷ですから2万2千坪にも及ぶ広大な敷地なので、市のド真ん中だしどうせだから全部ブチ込んじゃえというのか、なんでもありの市民レクレーション向けの施設に変貌しているというわけです。冬には温泉カピバラもあり。
でその楽寿館の前には小浜池と呼ばれる富士山の伏流水による広大な池が造られており、その昔は海浜を思わせる風雅な光景が広がっていたようなのですが、この三島沼津界隈は工場が多く、地下水の汲み上げにより水が全く湧き出ず、今では溶岩が剥き出しになったちょっと異様な風景。この小浜池から市街地へ向かって川が流れ出るのですが、その川へ至る瀬の部分は水が枯れ切って川底が露出しています。
この小浜池から二本の川が流れ出て、市内をクネクネと巡るのですが、こちらは近所の東レの事業所から浄化された冷却水を回してもらっているので、いつでも水が枯れることはありません。というか小浜池が満水だとかえって水が多過ぎてしまうとか。東側の長いほうが源兵衛川、西側の短い方が蓮沼川となります。
昭和の頃は今の中国の様に公害問題が深刻だったわけですし、市街地の河川は日本全国どこへ行っても生活排水垂れまくりの悪臭漂うドブ川だったわけで、この二つの川も御多分に洩れずゴミがプカプカ浮かぶヘドロ混じりの酷い有様だったようです。平成に入ってから近郊に名水で知られる柿田川湧水群があることから”水の街”というふれ込みで観光化を図ろうということになり、これはマズイということから行政・市民・企業が協力して環境復元整備事業が進められ、今では蛍の群落やカワセミも飛び交う清流に蘇りました。特に源兵衛川は親水公園として木道や飛び石による遊歩道も造られていて、川の中をのんびりとお散歩できます。
この源兵衛川は室町期に地元の豪族だった寺尾源兵衛が、耕作地の灌漑用に小浜池から用水路としてこの源兵衛川を造成したことからで、名前の由来もそこから。市内中心部を1.5km程の距離で流れており、様々な橋が架けられていて、その橋の下も潜って遊歩道は続きます。年季の入った橋が多く、中には明治期の石積みによるめがね橋もあったりします。
市内中心部ですから人様の生活空間の中を横切るわけで、民家の物干し台の側も通りますし、風俗店の裏も抜けたりします。テラス風のカフェもあります。
行きつく先の終点は中郷地区の温水池。灌漑用の溜池ですが、ここも源兵衛川同様に生活排水やゴミで汚染されたドブ池だった場所です。今では綺麗に浄化されて鏡面の様に周囲の木立を反映させており、南側からは”逆さ富士”も拝めます。
でもどうやら捨て犬捨て猫が多いらしく、あちらこちらに看板が。人の心までは浄化されていないようで・・・。
「楽寿園」
〒411-0036 静岡県三島市一番町19-3
電話番号 055-975-2570
開園時間 4月〜10月 AM9:00〜PM5:00
11月〜3月 AM9:00〜PM4:30
休園日 月曜日 12月27日〜1月2日