円通院 (えんつういん) 重要文化財



 松島を眼前に見る瑞巌寺の総門を潜り、鬱蒼とした杉木立の中を貫く参道を進み、受付の前で西の木戸口へと抜けると、こじんまりとした茅葺門の前にフイと出ます。ここは円通院という寺院で、瑞巌寺と同じく臨済宗妙心寺派の寺なのですが、瑞巌寺のような緊張感漲る峻厳さはあまりなく、どちらかというと料亭かお金持ちの別邸にでも紛れ込んだような雰囲気。瑞巌寺の国宝に指定された本堂・庫裏のような豪奢で雄大な建築物はなく、山門から奥の本堂まで続く石畳の参道脇には、縁結びの観音様と松島を模った枯山水の石庭が広がる、穏やかで優しげな表情を持つお寺です。

 

 この円通院は伊達政宗公の孫にあたる光宗(第二代藩主忠宗の次男)が早逝し、その菩提寺として瑞巌寺の南隣りに瑞巌寺の和尚により1647年(正保4年)に建立された寺院で、その霊屋を山内の最奥に配置して慰霊の地として祀られています。開山の謂れからか深閑とした環境が作られており、杉や楓に竹等の様々な木々や苔が山内を覆いつくして、緑陰の濃い清々しい風景が広がっています。
 茅葺屋根の茶屋のような外観の本堂は、忠宗が江戸納涼の亭を移築した建物で松島町の指定文化財。この本堂の前には、小堀遠州の江戸屋敷をコピーしたという池泉回遊式の庭園が広がります。本堂は別名「大悲亭」とも呼ばれており、ここで副住職の数珠造り体験も実施中。ちなみにこの副住職は若い女性で、数珠占いも有り。

  

 

 霊屋は「三慧殿」と呼ばれる小規模な仏堂で、屋根は宝形造の本瓦葺に三間四方の大きさ。寺院建立と同時の1647年(正保4年)に建造されており、国の重要文化財指定。
 霊屋建築は日光東照宮に見られるように装飾性豊かな物件が多いのですが、この三慧殿は外観に関しては比較的シンプルな意匠で、軸部は板壁・長押・頭貫等による和様となり、中備に桐の紋様の蟇股を置き、軒先の組物は二手先とオーソドックスな仏堂建築。周囲には高欄付きの縁も回しており、優美な印象も見られます。
 この三間四方の宝形造による仏堂建築は東北地方に多くみられ、国宝の平泉の中尊寺金色堂やいわきの白水阿弥陀堂、それと同じ宮城県内の角田市にある国重文の高蔵寺阿弥陀堂と、このジャンルの代表的な仏堂が集中しています。浄土思想に基づく来世の風景を表現したもので、この霊屋もその流れに沿うものなのでしょう。

 

  

 内部は一室で、小組格天井に来迎壁が付き、柱など木部全体に透漆が塗られています。来迎壁前の中央に須弥壇と厨子が置かれており、その中に馬上衣冠束帯姿の光宗木像を安置してあります。
 この厨子は三慧殿の外観とは一転して極彩色の華麗な装飾で彩られており、特にスペード・ハート・ダイヤ・クローバーのトランプの紋様や、洋バラやスイセンを模った紋様で埋め尽くされています。これは伊達政宗公の命により西欧へ派遣された支倉常長が持ち帰った南蛮文化の影響で、黒漆・金箔とのコントラストも相まって、煌びやかな工芸品を見るよう。この厨子も国の重要文化財の指定を受けています。この円通院最大の見所。

 



 「円通院」
   〒981-0213 宮城県松島町松島字町内67
   電話番号 022-354-3206
   拝観時間 4月〜11月 AM8:30〜PM5:00
          12月〜3月  AM9:00〜PM4:30
   拝観休止日 年中無休