子供の頃引き揚げて間もなく家が無くて、すぐ近くの常信寺にお世話になったことがあります。当時は、まだ電車道路に空襲の跡が残り、多くの人が住む家にも不自由していましたから、お宮は荒れ放題でした。雨の日などは、松山神社の拝殿はよい遊び場でした。今回57年振りにお宮に参って、綺麗になっているのに驚きました。
拝殿のすぐ前で、庭師風の一人の男性が桜の木の手入れをしていました。ちょっと見せて頂いたら、枝が空洞になって折れそうなのを、竹で補強しているところでした。「昔この近くに住んでいたのですが、綺麗になりましたね」と言ったら、綺麗になったのはつい最近のことで、鬘と竹薮で参道に足を踏み入れることも難しかったそうです。この庭師風な方が、総代の能田道孝さんでした。
能田さんが、「その木の鳥居は傾いていませんか」と私に問いかけられる。よく見たら心持傾いているようにも見えました。
能田さんの観察によると、一年に一ミリ以下だが、確実に毎年傾いているそうです。鳥居の根元に薄くセメントを張り、それに生ずる小さな亀裂から傾斜を割り出しているのだそうです。更に言葉を継いで、「これは、宅地造成で山を削った為、地耐力が落ちたからです」と言われる。
お天気の日は毎日来てお宮の手入れをしている、能田さんの松山神社に対する深い愛情と、地道な観察からの言葉は非常に説得力があります。
ここの注連石に「大順・成徳」と書かれているのは、権現さんを合祀して、祭神が徳川家康であるから「徳」の字を取ったということも教えて頂きました。
春を待つ 桜に添え木 宮の守
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