丸山神社は、札所四十六番浄瑠璃寺、四十七番八坂寺から近く、遍路道の近くにあります。
神社から二キロ足らず北方向へ下ると、市営のある特老施設があります。帰りにそこへ知人の見舞いに行って不思議な書を見ました。
廊下に展示している、入居者の作品の一つです。半紙に「いぬ」と二文字だけ書かれ署名も何もないから、誰が書いたか分からない。
無名の入居老人が、リハビリを兼ねての書道でしょう。不自由な手で生まれて始めて持った筆で書かれたと思われる紙の上には、一生懸命上手に書こうとする気迫が紙全面に漲っているが、なんの衒いもない。これ以上下手には書けないと思える白と黒の空間は、異様な芸術空間を作っているが、作為のかけらもない。しかし一緒に入所出来ずに残してきた「いぬ」に対する愛惜の情が痛いほど伝わる。
米山の書を見て心が洗われているのか、私の感性も少なからず湿りを覚えました。
米山は、このような飾らない感性を共有出来る人達に支えられたのでしょう。
雲一つ 笠の代わりに 遍路道
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