東山神社の入り口、30メートルほど北側の細い路地に、「ゆうゆう」という小さい喫茶店がありました。カウンターに三人も座ったら満席になりそうな小さな店に、私より少し若い(つまりかなり年配の)マスターが一人新聞を読んでいました。
「こんな店絶対に客は来ないだろうな」と思った私の腹の底を見透かしたように、マスターがコーヒーを入れながら「定年後のボケ防止にやっています」と言われる。
「三輪田米山の書を尋ねて自転車でぶらぶらしています」と言ったら、「そういう話しなら家内が好きだから」と奥から奥さんを呼んで下さった。
奥さんは子供の頃、ある酒の席でお年寄りが米山のことを「べーやんが、飲んだくれて下手な字を書いてのう」と言っていたのを覚えておられるそうです。
神社の前には、伊予の青石の神名石に、私でも読める上手な楷書で「東山神社」と大書されていました。
下手な字を 米山流と 言い訳し
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