ジャンル サウンドノベル
機種 SFC
開発 チュンソフト
発売 チュンソフト
メディア ROMカートリッジ
発売日 1992年3月7日

 


 ストーリー

 弟切草という草がある。薬草として優れた効能を持ちながら、平安時代から伝わる忌まわしい伝説によって、弟切草という不吉な和名と、「復讐」という縁起の悪い花言葉を付けられた草である。
 主人公とその恋人の奈美は、夜の山道をドライブしていた途中で事故に遭い、落雷によって倒れてきた木によって車を潰されてしまう。帰るに帰れなくなった二人は、近くに見えた灯りに向かって歩いていくが、そこにあったのは弟切草の花畑に建つ不気味な洋館であった。その後起きた出来事によって、二人は洋館に閉じ込められることになるが、やがて二人はこの洋館の秘密にまつわる事件に巻き込まれていくこととなる。

 


 レビュー

 この作品『弟切草』は、後に発売されたかまいたちの夜と並んで伝説に残る作品である。いわゆるサウンドノベルというジャンルを一番最初に打ち出した記念すべき第一作であり、ホラー作品としても有名である。今作およびかまいたちの夜が、サウンドノベルというジャンルを確立させたのである。

 なによりこの作品が特別視されるのは、後の多くのノベル系ゲームの先駆けとなった点だろう。後のサウンドノベルや、ノベル系ゲームのほとんどはこの作品の影響を受けている。特にストーリーの分岐やフラグの成立などは、明らかにこの作品を参考にして作られているだろう。
 特筆すべきは、弟切草はシナリオの進行によってストーリーが変化し、それによって複数の結末が導き出される「マルチエンディング」を備えている点だ。「マルチエンディング」そのものは過去にもなかったわけではないが、結末はおろか設定さえ変化していく「マルチシナリオ」と「マルチエンディング」を備えたノベル系ゲームは弟切草が初めてだろう。これ以後、あらゆるノベル系ゲームに変革が起こったと言っても過言ではあるまい。

 システム的には今作の時点で基本的な部分は出来上がっている。
 システム面で面白いのは、前述の通りフラグの立て方によってストーリーや設定が変化していく点だ。例えば主人公の恋人である奈美にはある秘密があるのだが、シナリオによっては全く異なる設定がなされている。最初は共通のルートだが、ある分岐でシナリオが決定されるという手法も、この時確立された。以後このシステムはかまいたちの夜でさらに洗練されることとなる。
 ただ、このシステムは少々欠陥がある。シナリオの進め方によってはそのシナリオとは関係ない伏線のイベントが入り込んでしまうのだ。まあこれは一番最初の作品ということで目をつぶれる範疇であるし、明確な間違いというほどのものではないので問題ないといえば問題ないのではあるが。

 ストーリーは典型的なホラーものだ。だがそのシナリオ構成と演出効果によって、SFC史上では最も怖いとも賞賛されるホラー作品に仕上がっている。また序盤や特定のシナリオでは結構笑えるシーンもある。

 グラフィックはまだ単純ではあるが、この時期のSFCとしては上出来。そして演出に関しては見事なものだ。闇の中からいきなり笑い声がしたり、突然ミイラが現れたりするシーンはかなり怖い。また炎のエフェクトは一見の価値ありだ。こういう発想が生まれるあたり、やっぱりこの作品は凄いと思う。
 音楽もまた素晴らしい。恐怖を演出するため、映像効果と合わせて効果的に使われている。曲そのものもなかなかいい。さすがサウンドノベルの名は伊達ではないという所か。

 難易度に関しては、評価が少し難しい。実はこの作品、バッドエンドはない(厳密には、一つバッドっぽいものがあるが、ちゃんとスタッフロールが流れるし、そのシナリオは固有の設定がなされているので一般的な「バッドエンド」ではないだろう)。だからどんなプレイをしても基本的にいずれかのエンディングに辿り着ける。ただ全てのエンドを見るのは難しいので、何度もやってどこでフラグが立つかを確かめていかないとならないだろう。

 一番最初の作品だけあって色々と荒削りな点はあるが、それらを補えるだけの品質も同時に備えている。