Vilcabamba
 ビルカバンバ

 インカ帝国最後の都である遺跡で、現在のペルーの、ウルバンバ川の支流のほとりに存在する。正式には「ビルカバンバ・ビエハ」という名前であり、古いインカ語で「聖なる谷」という意味である。マチュピチュを発見した探検家のハイラム・ビンガムは、マチュピチュこそがビルカバンバであると信じていたが、のちにビルカバンバ征服に従事した兵士の記録から、エスピリトゥ・パンパと呼ばれていた遺跡がビルカバンバではないかと考えられるようになり、その後考古学的にもこれがビルカバンバであることが確認された。
 フランシスコ・ピサロ率いるスペイン人によって征服されたインカ帝国において、前の代の皇帝アタワルパと対立していたマンコ・インカ・ユパンギは、ピサロによって傀儡の皇帝として擁立される。だがやがて、ピサロと対立するようになったマンコ・インカは、スペイン人の隙をついて首都クスコを脱出し、先住民の大軍を率いてクスコを奪還しようとするもこれに失敗、ウルバンバ川流域の奥地へと逃げ延び、ビルカバンバを建設した。
 ビルカバンバが建設されたウルバンバ川流域の奥地は非常に峻険な地形で、スペイン軍も容易に近づくことができなかった。マンコ・インカはビルカバンバを首都とし、この帝国は35年の間独立を維持したが、裏切り者によるマンコ・インカの暗殺や、スペイン人との対立の激化などによって勢力は衰退し、1572年にスペイン人の襲撃によって滅亡し、インカ帝国そのものも滅びることとなった。