邦題 | TOMB RAIDER 美しき逃亡者 |
---|---|
ジャンル | アクションアドベンチャー |
機種 |
Windows PS2 |
開発 | CORE DESIGN |
発売 | EIDOS INTERACTIVE |
メディア |
Windows:CD-ROM(3枚組) PS2:DVD-ROM |
発売日 | 2003年10月23日 |
ストーリー
冒険家ララ・クロフトは「死亡」し、彼女の生存を信じて救助活動を行っていたフォン・クロイ教授も、彼女のバックパックを発見した以上の成果を得られず、救助活動は打ち切られた。
だがララは生きていた。崩落した遺跡から自力で脱出したのだ。しかし、暗黒の中孤独と絶望に耐えながら脱出したララは、恩師であるフォン・クロイに見捨てられたことから人間不信に陥り、ロンドンで暗く孤独な生活を送るようになっていた。
そんな中、ララにそのフォン・クロイから連絡が入る。フォン・クロイはパリにある自分のアパートで、自分がオブスキュラの絵画というものに関わっていたが、何者かに命を狙われているから助けて欲しいと告げる。フォン・クロイを冷たく突き放すララだったが、その時フォン・クロイが銃を抜いたと同時に銃声が響いてララは気を失い、気がついた時にはフォン・クロイは死んでいた。
こうしてパリ市警に追われる身となったララは、真犯人を突き止めるべく立ち上がることとなる。
レビュー
追加レベルや番外編を除くとシリーズ6作目となる今作『TOMB RAIDER THE ANGEL OF DARKNESS』は、ゲームエンジンそのものを変更し、新たな要素を加えて全く新しいTOMB RAIDERを実現しようとした作品である。だが、その挑戦は空回りしてしまった印象が強く、終始操作性の悪さやシステム面の欠陥がつきまとう中途半端な印象の作品となってしまった。
今作はその期待の高さと内容のギャップが大きく、海外でも予想を大きく下回る売れ行きとなってしまった。特に前作までのファンの間で不満が大きかった。これはゲームシステムを変更した際、これまでのシリーズにあった良さが無くなってしまった事が大きいだろう。
そして今作の失態の影響を受け、次のTOMB RAIDERはその生みの親であるCORE DESIGN社ではなく、Legacy of KAINシリーズで有名なCristal
Dynamics社が製作することが決定している。そういう事態に陥るくらい、今作の評判は良くなかったのだ。
基本的なシステムは今作も前作とそう大きな違いは無い。ただ今作ではダッシュが中盤以降で無いと使用できず、また見回しが同じキーで、走行中にキーを押すとダッシュができるようになっている。またダッシュ中にジャンプすることで大ジャンプもできるようになった。
また今作では、ララの他に、カーティスというキャラを一時的に操作する場面がある。カーティスは全体的にララより動きが悪く、ダッシュができないため、あまり良い印象は受けない。というかこのカーティス、ムービーシーンではチャクラムのような武器を使っているのだが、実際に操作するとこれがなぜか使用できないので、単なるララの劣化版みたいになってしまっている。
今作には新しいシステムとして、ステルスの要素が追加されている。ステルスモードに入ると足音を消すことができ、敵に背後から接近したり、相手を素手により一撃で倒したりすることができる。また壁に張り付いて移動したり、角から向こう側を覗いたりといった要素もできる。だがこのシステム、ゲームの構成上あるレベルでしか実質上使用できない、他のステージだと背後から接近しても何故か素手で敵を倒せない、銃で倒した方が効率がいいなど、全然使えないものとなっている。これならステルスなんて入れないか、歩きにステルス効果を追加する(TOMB
RAIDER CHRONICLESみたいに)だけで良かったんじゃないかとさえ思う。
また格闘戦をすることもできるが、これもその機会は皆無に等しい。
そして今作はこれまでの作品に比べて全体的に動きが鈍くなっている。これも、シリーズが培ってきた軽快なテンポを打ち壊している。加えて攻撃を受けて倒れた直後にはなぜかすぐに走れないという変な特性がある。
また照準システムも変更が加えられ、これまでは銃を抜いたら敵の方に照準するだけだったのが、今作では照準している間は左右にステップできるようになった。ただこのシステムもかなり扱いづらい。このステップの動きがぎこちないため、上手く動けないのだ。また実質上ジャンプ撃ちをすることもできなくなっている。まあこのシステムも通常のザコ敵相手には特に問題とはならないのだが、ある特定のボス戦ではボスの急所に照準を合わせるのが非常に難しいため、倒し方さえ分からなくなるという重大な問題が発生している。
動作以外では選択肢というシステムがあり、キャラクターと会話して選択していくこととなる。この選択肢を間違えると即ゲームオーバーになる事もある。ただこのシステムも活用できる場所が少ない、結局イベントやストーリーは変わらない場合が多いなど、あまり入れた意味は無いように思える。
また成長の要素が採り入れられており、特定の動作をすることで力やジャンプ力が上がったりするのだが、これも必要な場所で必ず入手していくもので、ほとんどアイテムと同じと考えていいものである。ゆえにこちらもあまり入れた意味が無いと思う。
ストーリーは設定そのものは悪くないし、演出もなかなか良くできているが、その設定を上手く活用できていないのが残念なところである。また明らかに説明不足なシーンも存在しており、続編の構想があったらしいので、その辺で補完される予定だったのかも知れないが、それも叶わぬ夢となってしまった。
グラフィックは新エンジンを使用しているだけあってかなり綺麗である。ただ綺麗ではあるのだが、格闘戦の時にポリゴンが通り抜けてしまうといった粗さもある。
音楽はロンドン・シンフォニー・オーケストラが担当しており、これに関しては十分すぎるほど良くできている。初代TOMB RAIDERにあったような、コーラスを入れるといった演出もあり、なかなかの好印象だ。
難易度はこれまでの作品に比べると低めだろう。ただ動きの悪さが終始足を引っ張るので、やはりそれが問題か。
今作は、色々な要素を入れながらそれを使いこなせておらず、さらにシリーズの良さが無くなってしまったために、あまりにも中途半端な作品となってしまったのだと言えるだろう。