「MJ無線と実験」6回連載シリーズの第2弾となった6V6 ビーム管接続シングルパワーアンプです。2020年5月号から2020年10月号にかけて発表しました。
この連載シリーズはある意味、教科書的な役割を持たせたかったので基本を大切にしました。ビーム管6V6を使うにあたっては3極管接続やUL接続を用いず、本来の用法である多極管として利用することにしました。
----6V6 ビーム管接続シングルパワーアンプの連載内容----
2020年5月号 1920〜30年代にビーム管が開発された背景
2020年6月号 真空管のゲッター、真空管回路の負荷について
2020年7月号 スクリーングリッド電源リップルノイズ対策
2020年8月号 シミュレーションで回路設計し実体配線を設計
2020年9月号 実機の製作と電気的特性の測定
2020年10月号 音質を改善して詳しく試聴
雑誌発表時には6V6規格表に基づいて出力管負荷5kΩを採用して一定の成果がありましたが、このWebページではその改良型を掲載します(雑誌未発表)。
6F6との共用性能を上げるために、2022年5月に出力管負荷を6F6の規格である7kΩに変更しました。これに合わせて出力管自己バイアスのカソード抵抗値も変更しました。NFBは約12dBと変わりありませんが、微分補正を変更しています。 音質調整もやり直しました。特に、多極管を多極管接続で利用する際に音質的に非常に重要なのが、出力管コントロールグリッドに数kΩの抵抗を入れることです。
多極出力管は電極間容量と出力トランス1次側のコイルの間で微小な振動現象(あるいは共振、発振)が発生して高音にひりつきが生じやすい性格があります。これを抑制するには、CR結合とコントロールグリッドの間に2kΩ〜10kΩの抵抗を入れます。本機の雑誌発表時のように必要がない場合もありますが、実態としてかなりの確率で必要になります。
いくらの抵抗値が適切なのかは計算できません。実機を聴きながら高域のひりつきが収まるポイントを探し出します。改良後の本機では微分補正では消せないひりつきがあったため、抑制抵抗を入れることにしました。抵抗を入れ替えては試聴する作業を入念に繰り返して最適値を探し出しました。
また、音質調整の一環として電源用電解コンデンサの応答性能を向上させる調整も見直しました。 |
このような改良の結果、6V6はより力強く鳴るようになりました。6V6は本来この負荷(7kΩ)が適正なのではないかと思われるくらいの大変身です。クリップ前最大出力は以前と同じです。
6F6はビーム形成電極の代わりにサプレッサーグリッドを持つ5極管ですが、6F6を挿しても本機の特性はビーム管6V6のときとほとんど変わりません。このことからも6V6が6F6互換球として開発されていることがわかります。両者の音質は若干違いがあるのですが、本機の場合はよく似た音を出しており、ほとんど区別が付きません。アンプのできがよい証拠ではないかと想像しています。
私はこの音がたいへん気に入りました。特に往年の海外製(アメリカ製、カナダ製、英国製など)のタマで鳴らすと、高価な球に劣らない音を楽しむことができます。エレキギターアンプに用いられることのない6F6系のアメリカ製のタマは現在でも格安で入手できるので、うってつけです。
本機はこの意味で、かつてのアメリカンサウンドの醍醐味を手軽に手に入れることができるアンプとなりました。比較的小型な6V6、6F6シングルアンプは見過ごされがちかもしれませんが、一度試してみる価値は十分にあると思います。 各種銘柄の6V6/6F6の音ですが、現代ロシア製の6V6GTとソ連時代の6V6GTは作りが異なっていて音にも違いがあります。現代ロシア製はどちらかというと上品で羽目を外さない性格です。ソ連時代のものはアメリカRCA製のコピーと考えられているようですが、けっこうりっぱな音で鳴ります。
スロバキアJJエレクトロニック製6V6Sはダイナミックに鳴ります。ややもすると品が失われかねない危うさがありますが、初段12AT7の銘柄を選ぶことによって生き生きとしたよさが出てきます。
往年のアメリカ製(および外国GE工場製)は伸びやかさと高域の浸透力がずば抜けており、さすがと思います。
初段12AT7の各種銘柄の音質も出力管と似たような傾向があります。12AT7もギターアンプで使われることがめったにない球なので往年の高品質なNOS(New
Old Stock、死蔵在庫)品が容易に手に入ります。 改良前の旧型になりますが、製作の詳細と実体配線図は「MJ無線と実験」を参考にしてください。 |