最初の発表は「ラジオ技術」2018年10月号です。3機種のプッシュプルアンプを試作して得られた知見を集大成したアンプとして製作しました。
2019年3月号ではJJ製6L6GCを採用して音を刷新し、音質を再調整しました。自宅の常用機としてCD、ネットラジオ、LPレコードなどの鑑賞に大活躍しました。
レプリカ頒布版では残留ノイズ対策を徹底するために、初段に真空管カバーを採用しました。
レプリカオーナーの方からは「ピアノの音色がすばらしい」とのご評価をいただいています。実は私が音質調整で何よりも大事にしているのが、弦楽器とともにピアノの再現能力です。苦労したかいがありました。 位相反転回路にQuad-II型を採用していますが、本家Quad-IIのもうひとつの特徴である出力管カソードNFBを本機は持っていません。そのためこの形式を「Quad-II´型(クオッド・ツー・ダッシュがた)」と自称しています。
これにより生じる違いはダンピングファクタが本家の約半分であることです。本家Quad-IIは管球式アンプの限界とも言える20もあるのに対して本機は10.9ですが、家庭で使うなら実用上何も問題ありません。
本家より有利なのは入出力感度です。本機は0.8Vの入力で最大出力8Wに達しますが、本家Quad-IIの場合は同じ出力を得るのに1.4Vの入力が必要になります。
Quad-IIと同じ位相反転回路を採用した理由は、大きなNFBを無理なくかけられることです。本機は微分補正をかけただけでQuad-II同様の20dBものNFBをかけることができました。結果として良好な特性と音を得られました。
搭載している出力トランスは小型ですが、出力トランスをシングルよりも小型化できるプッシュプルの利点を生かしたものです。許容最大出力に対して十分余裕のある使い方をしています。周波数特性の8Hzに小さなピークがありますが、実用上の問題はありません。
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整流管GZ34(5AR4)の役割は電源投入後にゆっくりとB電圧を上げるためのものです。整流そのものはダイオードが行います。整流管の銘柄によって音質が少し違ってきます。本機にはJJ製GZ34Sがお奨めです。 出力管に対して手作業で調整を行う箇所はありませんが、特性のそろったペアチューブを2組、もしくはクアッド(4本組)を使用します。
使用出力が比較的小さい日常的な用途なら自己バイアスペアでも問題ありません。自己バイアスペアを自分で探すのに便利なように、カソード電圧の測定端子をシャーシ前面に用意してあります。
本家Quad-IIの初段管はEF86(6267)ですが、英国製のビンテージ球は高価になりすぎました。そのため本機はGE製の6AU6を採用しました。ノイズの少なさや音質面で遜色ありません。
初段管6AU6についても、できるだけ特性が似たものを使うと音場感が素直になります。 出力管には6L6系全般を使えます。6L6系は品種が多種多彩なので、気に入った音を出す銘柄を選ぶ自由度があります。
2019年3月号で採用したJJ製6L6GCは高域がよく伸びる高品質なタマです。GE製6AU6も高域がよく伸びるため、両者を組み合わせると非常に美しい音を出します。クラシックはきめ細かく、かつダイナミックに鳴り、ポピュラー音楽は歯切れのよいパワフルなサウンドです。
なお最大出力9Wは家庭用には十分すぎる大出力です。学校の教室を大音量で鳴らせます。
昔作った「Quad-II回路レプリカ」と称している自作アンプはトランジスタ・アンプのようなかっちりした音で鳴りました。一方こちらは管球アンプらしいしなやかさがあります。
製作の詳細と実体配線図は「ラジオ技術」をご覧ください。 |