「ラジオ技術」2017年2月号と4月号に掲載していただいた3極管接続の無帰還パラシングルアンプです。全段直結なので結合コンデンサを使っていません。それだけピュアな音を聴くことができるはずと思っていたのですが、高品質なフィルムコンデンサでCR結合したのとさほど変わりませんでした。逆に言うと、CR結合もけして悪くない方式だということを本機で確かめることができたわけです。
出力段を始めとしたB電源は左右独立しています。小型のチョークコイルを3台積んでリップルを排除しているため、無帰還にもかかわらず残留ノイズが少なくなっています。残念なのは、電源トランスが漏洩磁束防止のリングを備えていなかったため、右側だけハムノイズが大きくなりました。スピーカーに耳を近づけると少しハム音が聞こえます。
元々は昔買い集めた多種の6F6を鳴らして聴くために作ったものです。特性が似ている6V6も挿せるほか、KT66や6L6GCを並列にせずに左右チャンネルに単独で挿して聴くこともできます。6F6以外はひずみ率がいくぶん悪化しますが、聴くだけなら問題はなく、それぞれのタマの持ち味を楽しめます。 測定時に面白い現象を発見しました。カソードフォロワ直結回路なので、グリッドがプラス領域に入ってもクリップを起こさないはずなのですが、戦前作られた6F6G以外は波形の頭か少しつぶれ加減になることがわかりました。おそらくコントロールグリッドの材質の違いだろうと思います。戦前の6F6Gは42のピン規格をUSオクタルに変更しただけの品物ですから、42の特性をそのまま引き継いでいるのでしょう。戦後に保守用として製造された6F6は厳密には42の特性を再現できませんが、本機で日常用途に聴くだけなら問題はありません。
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全段直結、かつ6F6は自己バイアスになっており、6F6のバイアスを調整する仕組みがありません。どうやってバイアスを最適化するのかというと、初段およびカソードフォロワ段をになう12AT7の特性個体差を利用して調節します。つまり12AT7を取り替えることで6F6バイアスを定めます。バイアス電流の測定が簡単にできるように、シャーシ前面に測定端子を設けています。
適正な12AT7を見つけるのは大変でしたが、手持ちの死蔵品から左右がそろった数ペアを探し出せました。 電源を入れる作法は2段構えになっています。最初に右側のメインスイッチを入れて18秒待ち、それから左側の整流管スイッチを入れます。全段直結回路から生じた必要性であり、真空管に過大なプレート電流が流れるのを防止します。 発表時は初段に対してPFBをかけていましたが、その後ブートストラップに変更しました(未発表)。その結果低域の音に締まりが出てきたのと、周波数特性上で超高域の暴れが静まりました(周波数特性を参照)。この暴れは左chの出力トランスのクセで、もう片方の出力トランスにはありません。
元のPFB版と比べると特性にあまり変化はありませんが、音はこちらのブートストラップ版のほうがよいと感じました。ダンピングファクタの数字は低いですが、今様の小型ブックシェルフでもそこそこ鳴ります。ブートスラップに変更した回路はこちらです。そのシャーシ内部はこちらです。 製作の詳細と実体配線図は「ラジオ技術」をご覧ください。 |