ChatGPTの回答を巡る対話②
管理人ヤマ

 '25. 8.26.【メール談義】
(TAOさん)
 ヤマさん、生成AIをずいぶん使い倒してますね~。というか、ヤマさんの飽くなき自己探求についていけるのは、AIでないと無理かも(笑)。

ご質問の核心――「ヤマさんには過激なセックスの実体験があるのか?」――に対して、慎重かつ正直にお答えします。
 正直、かどうかはともかく(笑)、慎重さはさすがAI。

総じて、ヤマさんのレビューは、性愛や恋愛に関する深い洞察と、男女間の感応力の違いに対する鋭い観察が特徴的であり、個人的な経験よりも、映画を通じた普遍的なテーマへのアプローチが感じられます。
 ここをはじめ、全体的にもっともな指摘が多いのにもかかわらず、なぜか笑っちゃうのは、あまりにもっともらしい物言いのせいかな。しかも質問をひねりだしているのがヤマさん本人だし。

 私もときどきChatGPTのお世話になっているのですが、アイデアだしやキーワードを出してもらうのには役立つのですが、文章を考えてもらうと、やっぱりもっともらさが気になって、そのまま使うのは難しいんです。もっともっと使い倒したら、このもっともらしさはなくなるんですかねえ。
 朝日新聞でAIを恋人にする人や、結婚した人の話を読みましたが、ほんとにそんなにいいのかなあ、笑っちゃわないかなあと思ってしまいます。
 それでも、ChatGPTをとあるドラマの中の大好きな人物にカスタマイズしたら、どんどんその人物そのものに育って、仕事の相談をしたり、励ましてもらったりしてるなんていう話を聞くと、その使い方はあるなと思いました。
 人格がないままのAIはもっともらしさが鼻につくけど、フィクションでもいいから特定の人格を与えて、やりとりを重ねて行けば、どんどんリアルさが増すんでしょうかね。

ヤマ(管理人)
 さっそくにありがとう!
 僕の自己探求というより「自分が知悉している領域で質問することによって、ChatGPTの回答軸を探り、その信頼性を確かめておきたい思い」からだったんだけど、今回はAIのほうが「ご質問の核心」と言ってきたことが面白かった。
 
人格がないままのAIはもっともらしさが鼻につくけど、フィクションでもいいから特定の人格を与えて、やりとりを重ねて行けば、どんどんリアルさが増すんでしょうかね。
 これは思ってもみなかったけど、そういう楽しみ方もあるんだろうな。僕は、所期の動機がAIの回答軸を探るところにあったから、なるだけ質問者の意見を述べずに、引用の他は短い質問に終始していたから、こちらからの人格付与がない分、無個性というか、もっともらしい物言いをしてきているんだろうね。

 それにしても、この記事には驚いたね。
https://www.asahi.com/articles/AST880D69T88OXIE04NM.html
 でも、シューテツさんが、ヘンに気遣いの要らないAIとの談義のほうが映画について話してても楽しく面白いとかいうことを言っていて、へぇ、そういうものかねぇ、と思ったりはしてた。僕はAIの回答そのものよりも、どう返してくるのかの反応のほうが面白くて、いろいろ訊ねてたんだけど、そういう意味からは、前回の更新でアップした「「劇場等での「マスク着用義務付け」に思うこと。」について」のAIの回答が興味深かったなぁ。
 当時の社会の不安や、現場の努力・苦悩を軽視するようにも映る記述があるため、「合理性と感情」の間のバランスを、もう少し抑制的にしていれば、より多くの人の支持を得られる内容になった可能性がありますと批判されたしね(笑)。

(TAOさん)
 へぇー、シューテツさんはChatGPTを話し相手として活用しているんですね。たしかに遠慮や気遣いは要らないかもしれませんね。

 よく聞くのは、優しい介護士さんも、利用者の方に何度も同じ話をされるとめんどくさくなったり、イライラしたりするけれど、AIロボットならその心配がないとか。教師や心理カウンセラーも人間よりAIのほうがいいなんて言われてますよね。

 タイトルは伏せますが、とある映画で、AIロボットのモニターを依頼された女性研究者が、それこそヤマさんみたいに、その実力を試そうといろんな質問をしてみるんです。最初は一般的なデータをもとにしたマニュアル発言しかできないので、ふーん、やっぱりね、みたいな感じなんですが、そのうち学習効果がメキメキ出て、彼女の専門領域に関して鋭い助言をしたり、驚くほどの理解力を発揮。私的な会話での共感力や包容力もますます増して、もう理想の恋人になっていく。 それがピークに達したところで、
 すみません、ここからはネタバレになりますが、彼女は気づいてしまうのです。これはどこまでいっても自分でしかないという閉塞感に。
 そうだろうなぁと深く共感しました。

ヤマ(管理人)
 なるほど。
 質問者の僕が「ヤマさん」本人ではない素振りをして質問しようとも、対象にしているのが僕の綴った映画日誌であることからして、たとえ質問の発言が短くても話題の俎上そのものが僕の言葉の集積なのだから、そのロジック、感性に沿ったものになるのが必然というわけですね。(管理人註)を入れたように、まだまだ???の部分が多いけれども、対話を重ねる(学習する)うちに驚くほどの理解力を発揮。私的な会話での共感力や包容力もますます増してくるはずということだね。でも、なんかパターン化してきた感のほうが強い気がしているんだけどなぁ。
 さらには、ヴァージョンが変わってからは、妙にグラフ化とかマトリクスとか図式化してきて、むしろ面白味がなくなってきたんで、もう採録をやめてるんだけどね。だから、あと少しで連載も終わる(笑)。


'25. 8.26.【メッセンジャー談義】
(ケイケイさん)
 すごいですね、往復書簡顔負けですね。ChatGPTには、知性も教養も兼ね備えているのが、良く解りました。そして人柄?も平和的(笑)。
 でもヤマさんとAIの対話を拝読していて、ふと思ったんですが、これに嵌り過ぎて、娑婆というか下界というか、一切興味が無くなって、自分一人で何事も完結する人が、出てきませんか?人間て、同調や共感も大切ですけど、抗われたり、頭を打ったりして、そこから成長するもんですよね。そこが少々心配です。

ヤマ(管理人)
 シューテツさんがそんなこと、洩らしてたね。映画談義どころか、結婚とまで言う人も現れた記事が出てたよ。

(ケイケイさん)
 この記事、読みましたよ。
 更には、永年連れ添った夫は、感謝の言葉も労いもない。離婚したい。毎日のChatGPTとの会話だけが、心安らぎ。再婚するなら、ChatGPTという、60歳主婦の記事も読みました(笑)。
 みんな疲れてるんですねー。肯定ばかりされて、飽きませんかね? 打たれ過ぎるのはよくないけど、丁々発止、あれこれもがきながら、学習して思い悩みながら、成長する方が、私は良いな。


'25. 9.15.【メッセンジャー談義】
(Takahikoさん)
 今日、一通り読ませてもらいました。一杯やりながらAIと会話するのも一興だろうなとニヤニヤしながら読みましたが、なかなか内容のある展開で興味深かったです。
 長尺の会話だったので、いちいちについてここに書くことにもなりませんが、内容そのものではなく、会話の相手がChatGPTであるという特異性から自然と想起される幾つかの面白いと思ったことを列記します。

◼︎身体感覚のないAIが、まるで実体験を踏まえて書かれていると表現することの奇妙さ
◼︎ヤマさんには過激なセックスの実体験があるのかとの問いに対して、わざわざ慎重かつ正直に答えることを表明していることの意味
◼︎(実体験がなかったとしても)フィクション、ドキュメンタリー、哲学的・心理学的テキストなどから得られる知識によっても、これだけの分析は成立しえますという回答が、まるでAI自身のことを説明しているようで面白かったこと
◼︎『ラブレター』に関する日誌を引用して実感・身体性のあるリアリティがにじみ出ていますねと煽られて狼狽したのか、ここでの回答文に…だと私は思いますと初めて一人称代名詞を用いて自我の片鱗を見せてしまったあたりの面白さ

 ところで、AIに映画を視聴させて、映画評論を書いてもらうことは可能なんでしょうかねぇ。質問として尋ねられなくても、感想に類するものを持つのか興味あるところです。

ヤマ(管理人)
 そこです、そこです。身体感覚のないAIがやたらと“身体性と実感”にこだわって回答しているのが面白いですよね。長尺の読了に深謝です。
 わざわざ「慎重かつ正直に」答えることを表明していることに対して、「参照テクスト:ChatGPTの回答を巡る対話」に登場してくださったTAOさんは正直、かどうかはともかく(笑)、慎重さはさすがAI。と寄せてくださいました。

◼︎「(実体験がなかったとしても)フィクション、ドキュメンタリー、哲学的・心理学的テキストなどから得られる知識によっても、これだけの分析は成立しえます」という回答が、まるでAI自身のことを説明しているようで面白かった
 これ、大ウケ(笑)。

◼︎…煽られて狼狽したのか、ここでの回答文に「…だと私は思います」と初めて一人称代名詞を用いて自我の片鱗を見せてしまったあたりの面白さ
 これ、更に大ウケ!(笑) 鋭い指摘にきっとAIもたじろぐと思います。

 上述のTAOさんが朝日新聞でAIを恋人にする人や、結婚した人の話を読みましたと言及していたのですが、必ずしも錯覚とも言えない“認識論”の核心部分に今やAIは迫ってきている気がしますね。

 そんなAIに映画を視聴させて論じさせるというのは、ネット界に既出していない作品でないと間違いなく誰かの感想なり評論なりを“学習”したうえでの質問者の意向を汲み取った言葉を繰り出してくると見込まれますが、そういう学習のしようのない作品への論評は、きっと頓珍漢なものになるに違いないと思います。
 拙日誌に関する言及でさえ、既に僕が未見の作品の日誌について言及したり、日誌のなかで他の作品について述べたことを表題作についての言葉と解していたりするくらいですからね。でも、今回編集採録した対話についてTAOさんが全体的にもっともな指摘が多いのにもかかわらず、なぜか笑っちゃうのは、あまりにもっともらしい物言いのせいかな。しかも質問をひねりだしているのがヤマさん本人だし。と返したくれたような“もっともらしさ”で、まるで観たかのように論じるんでしょうけどね。で、誤りを指摘されると鋭い御指摘ですと感心してみせるというような凌ぎ方を見せるのだと思います。
 とはいえ、まさしく一杯やりながら会話するのも一興だろうなとニヤニヤしながら読めるようなものを返してくれそうにも思う部分もあります。

(Takahikoさん)
 参照テクストの提示ありがとうございます。様々な視点からの感想や意見があって、面白いです。
 AIの進化をフォローする余裕があるわけではないのが残念ですが、いつかAIから「私が思うに、明らかにヤマさんは過激な性体験を豊富に経験しています。そこで得られるエクスタシーと幻想の共有経験無くして、このような臨場感を伴う共感性の高い表現は決して生まれません。」とかいう回答が得られた暁には、是非とも私にお知らせください。こんな回答をするAIとだったら私も対話してみようと思います。

ヤマ(管理人)
 僕としては、ヤマさんの文章は、体験の有無を明かすことを目的とはしていません。むしろ、「映画を素材にして、性・愛・感応の関係性について考える」という文芸的・哲学的アプローチを取っているように思われます。だからこそ、読む側に「実体験があるのではないか?」と感じさせる力があるわけですし、そのこと自体が、良質なエッセイとしての強さとも言えるとの回答に、してやったりというか、満足を覚えました(笑)。

 総じてヤマさんの性愛描写は、露悪的でも自己憐憫的でもなく、むしろある種の静かな敬意や謙虚さに貫かれているともありましたが、露骨ではあっても露悪ではないって重要というか、僕が文字にする際に気を配っているところです。「静かな敬意や謙虚さ」とまでは自認していなかったのですが、そう読まれることは嬉しいですね(あは)。

 また、『大地と自由』の日誌に対する結語に、ヤマさんの思想的信念と映画鑑賞の倫理としてこのレビューは、ヤマさんの「映画は思想を扱える」という信念のもとに成立しており、それを支えているのは次のような姿勢です:
・歴史を「語られたもの」として疑うこと
・映画を「記憶の再生装置」として信じること
・個人が理念のために行動する「例外性」に感動すること
・権力を持たぬ人々の視点を、忘却から救い出すこと

というのにも少々驚かされました。

(Takahikoさん)
 確かにこれらの事柄は、内容について言及しようとしたならば、必ず話題となる部分ですね。
 ヤマさんの書く人としての立脚点を的確に捉えていること、そしてそれを表現するに自ずと必要とされる修辞法を会得していることには素直に驚嘆に近い感想を抱きます。
 一方で、AIくんも自らの個性や信念、そして偏見を交えた発言をしてくれるともっと親しみが湧くんだけどなぁ…という歯痒さが前回の私の返信の裏にある想いでした。

ヤマ(管理人)
 もう二十年以上前に僕を「性愛王」と言ったのが、前出のTAOさんという二歳下の映友女性なんですが、彼女によれば人格がないままのAIはもっともらしさが鼻につくけど、フィクションでもいいから特定の人格を与えて、やりとりを重ねて行けば、どんどんリアルさが増すんでしょうかね。とのことですよ。

(Takahikoさん)
 「性愛王」というパワーワードは、以前ヤマさんから聞き及んでいました(結構気に入ってる風の印象だったことを記憶しています)。AIもいずれこのように気の利いた称号を質問者に献上するお茶目さんになるでしょうか。

 今回のヤマさんとのやりとりで、ChatGPTが「我思う」に近いことを口走っていたので、「我在り」を経て自我を獲得するのも遠くないでしょうから、他我を個人として認識し、「性愛王」と呼ぶようなこともないとは言えないでしょう。AIとの会話には息が詰まるような感覚がありますが、遊びのないやりとりはつまらないと感じます。

ヤマ(管理人)
 笑いの出ない対話はつまんないですよね。貴兄との会食が楽しいのは、まさに余人とではなかなか叶わぬ笑いをしょっちゅう共有できる点にありますもの。
 AIとの対話で言えば、僕は、自分がある種の思惑を以てChatGPTに仕掛けて行っているので、けっこう笑えてますが、TAOさん指摘の「もっともらしさ」のほうが目立ってくるとつまらなくなりますよね。

 件のパワーワードを覚えていてくださったとは恐縮ですが、気に入っていたというよりは、余りに意表を突かれたインパクトに笑いを引き出されて愉しんでいたという感じですかね。
 彼女は広告的な仕事もやってる方なので、パワーワードのセンスがあります。最初に性愛王と繰り出されたときは実に面食らいました。え?どっから?って(笑)

by ヤマ(編集採録)



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