政事における宗教団体とオンライン賭博
NHK

『“神の国” アメリカ もうひとつの顔』['25] 映像の世紀
 バタフライエフェクト
『オンラインカジノ 底知れぬ闇』['24] NHKスペシャル
 調査報道 新世紀 File4
『オンラインカジノ “人間操作”の正体』['25] NHKスペシャル
 
 今の日本の政治状況を眺め渡すうえで微妙に連関してくるところがあるように思われるドキュメンタリー番組をNHKプラスで三本続けて観た。


 最初に観たのは“神の国” アメリカ もうひとつの顔。トランプの岩盤支持層とされるキリスト教福音派について焦点を当てた番組だ。キリスト教福音派が今やアメリカ人口の四分の一に至っているとは吃驚した。北部のラストベルトと違って南部バイブルベルトという言葉は知らなかったが、進化論を否定する彼らが勝訴した裁判の話は新聞で読んだがある。

 いわゆる統一教会が我が国で説いていることにしてもそうだが、常識的な近代精神を備えている者からは狂信としか思えないことを信奉する者が現われ、彼らを利用しようとする者が現われるのは人間社会の宿命なのだろうが、南部バイブルベルトと結んだアイゼンハワーら歴代大統領を見るにつけ、統一教会と結んだ岸信介らを想起せずにはいられないし、神社本庁や生長の家などが中心となってできた日本会議が政界に及ぼしている影響力を思わずにいられない。

 ジミー・カーターが南部州知事出身であることは知っていたが、福音派信者だったとは知らずにいた。自ら福音派を名乗りつつ、政教分離を貫いた彼の施政姿勢は、政教分離の重要性を説いたケネディ大統領以上に立派だったのかもしれない。カーター政権が倒れた後のレーガン、ブッシュ、トランプといった福音派大統領を見るにつけ、改めてその意を強くした。信教の自由と併せて政教分離を定めている日本国憲法第20条の重要性を思わずにいられない。分離すべき政は、行政だけではないはずだ。


 次に観たのはオンラインカジノ 底知れぬ闇。何とも凄まじいものだった。若い時分、僕は周囲からもギャンブル好きだと目されていたから、あの頃が今の時代だったら、とんでもない目に遭っていたかもしれない。いや間もなく還暦どころか古希を迎えようかとしている今でも、そのリスクは充分に負っているのかもしれないが、幸いにしてスマホを持っていない。ちょうど半世紀前に大学受験で上京した際、持ち慣れぬ小金を所持していて、新橋のゲーセンで明け方まで過ごし、ただのゲーセンでさえ一晩で2万円という当時の僕の小遣いからすれば破格の散財をしたくらいだから、今の時代ならひとたまりもなかった気がする。強欲資本主義のなれの果てを観る思いだった。

 この依存気質というのは、巻き上げられる側だけでなく、巻き上げる側にもありそうなところが人間の業の深さだとつくづく思う。ICTがその効率性を極大化させるなかで、とんでもない事態が起こっているようだ。法的規制などでは制御できないような気がしてならない。

 海外でのディーラー志望の日本の若者を追った番組は、何かで観たことがあるような気がする。暗澹たる気持ちになったことを思い出した。ネットで金銭授受をしたくない僕は、ギャンブルどころかネットショッピングもしなければ、ペイペイなんちゃらもスマホがないから使えない。それで然したる不便も感じていないが、今年は税務署に母の確定申告に行っても、税務署でスマホを使った申告を促し支援している現場に出くわして魂消たのだった。結局、オンライン申告に係るパスワード登録をして自宅のパソコンから申告し、母の収入から源泉徴収されていた数万円の税金の還付を受けた。

 番組の最後で語られていた「それは只の暇潰しのはずだったのに、スマホの奥に待ち受けていたのは、ひと時の楽しみなどではなく、人生そのものを飲み込む巨大な闇だった」とのナレーションが重い。


 最後に観たオンラインカジノ “人間操作”の正体は、調査報道 新世紀『オンラインカジノ 底知れぬ闇』を観たことから、続けて視聴したものだ。魔手に食い物にされる若者と家族の姿がまことに痛ましい。カジノの合法化や誘致を図っている政治勢力に対する憤りを新たにした。

 こういう連中やいかがわしい宗教団体との親和性に入れ込む連中に腹が立って仕方がない。カジノ誘致に勤しむような勢力に政治的支持を与えている連中からは、在留外国人ヘイト問題を取り上げている番組同様に、これらもまた偏向報道などと言われているのだろうか。いないわけでもないはずの“カジノを健全に楽しんでいる人々”の姿などは、いっさい登場しなかった。

 それはともかく、データ管理プラットフォームによるプロファイリングがされているらしい。行動心理学者も加わってアルゴリズムを使って、依存症になるよう設計されているという開発当事者と称する人物の証言もあった。監視⇒分類⇒操作のプロセスを経て、しゃぶりつくされる仕組みになっているそうだ。キーワードは、“ハッピー・ピル(幸せの薬)”とのことだ。本当に腹立たしい。こういう顛末を観ても、きっと冷ややかに「自己責任だろ」などと、したり顔で冷笑するであろう連中にはもっと腹立たしさが湧いてくるように思った。
by ヤマ

'25. 4.23. NHKプラス



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