図子教授の著書

1 租税法律関係論       
   (平成16年9月)        

      



 
1 租税法律関係論ー税法の構造ー (久留米大学法政叢書14) 平成16年 成文堂

  税法の基礎的な理論についての疑問を追及し、納税義務の成立および確定の意義を明確にし、税額確定が人の意思表示によることを明らかにするものである。本書は、久留米大学博士(法学)の学位論文であり、この論文の審査委員であった清永敬次京都大学名誉教授から、確実に税法学を進歩させたものとの評価を得たものである。



内容  第一編  総論

第1章 税の法概念

   税の法的定義を、「税とは、国または地方公共団体の課税権に基づき、法によって強制的に給付を義務づけられた財または役務であるとする。通説は、税または租税を金銭給付とするが、給付を税とすることは正確ではないことを論証する。現在の「国税を納付する義務」等の税法の規定からは、税を給付という行為ではなく、財そのものと捉えていると解される。

第2章 課税権論
   税の定義で、課税権の概念を使用したが、国には法的権利として課税権が存在することを論証する。国に課税権 を認めることと国民主権の日本国憲法は矛盾しない。

第3章 租税法律関係の性質
   租税法律関係の性質については、権力関係説と債務関係説の二つの考え方があるとされるが、租税法律関係は権力関係上の債権債務であることを論証する。

第4章 租税債権債務関係
   租税債権債務関係は国と納税者との法律関係である。納税者、納税義務者、徴収権等の意義を明らかにする。

第5章 租税手続関係
   租税手続関係は、行政機関と納税者の法律関係である。税法の執行において、税務行政庁には法律解釈に関する裁量、事実認定に関する裁量、事務管理上の裁量が認めら れる。債権債務関係は法律により成立するが、現実の課税においては一次的に税務行政庁の大きな裁量の余地があることを指摘する。これが権力として意識されるものである。 


   第二編  各論

第1章 税額確定の法律関係
   
   通説は、課税要件を充足したときに抽象的納税義務が成立し、申告等により具体的納税義務が確定すると説くが、抽象的納税義務の意義について納得できる説明は無い。本章では、課税要件を充足したとして成立する納税義務は、金額未確定の租税債務であることを論証する。したがって、申告とは未確定の債務金額を決定する行為であり、意思表示に基づく法律行為であることを明らかにする。

第2章 源泉徴収制度の法律関係
   源泉徴収制度については、源泉徴収義務者が受給者の所得税を代わりに納付する関係であるとの理解が一般であるが、それでは現行法制上理解できない規定が多くある。本章は、国、源泉徴収義務者、受給者の3者の法律関係を明確にするものである。その結果、現行法制上、源泉徴収義務者の納付する所得税は、受給者に成立する所得税とは法律上無関係であり、源泉所得税は源泉徴収義務者に独立に成立する国税であることを論証する。

第3章 税額控除の法律関係
   消費税法の仕入税額控除に見られるように、税額控除が厳しい適用要件の下にある根拠を究明するものである。その結果、税額控除は納税者からする相殺であり、自動債権の存在についての証明義務は相殺の申立て者側にあるとのほうりに基づくことを明らかにする。

第4章 免税の法律関係
   税額控除が納税者からする相殺の法理によるものであることが明らかになったが、消費税の免税事業者のように免税とは何かを明らかにしたものである。免税とは、成立した納税義務の免除であり、債務免除である。その際、税額確定前の債務の免除があることを指摘する。






 
2 税法概論(十五訂版)  平成30年 大蔵財務協会  

  大学における税法の講義の教科書として作成したものである。税法の全般について、その概要を説明したものであるが、単なる説明でなく、制度の理論的根拠にも触れている。租税法律関係論等の研究成果を改訂毎に反映させており、簡潔であるが理論的であるとの評価をいただくこともある。十五訂版は、平成30年の税制改正に沿って改訂したものであり、配偶者控除、配偶者特別控除の改正、昨年改正のタックスヘイブン対策税制適用の内容、と、国税犯則取締法の廃止と国税通則法に新たに定める「犯則事件の調査及び処分」について触れている。
 さらに、今年の改正で新設された法人税法22条の2について、簡単に触れている。
 税制改正とは別に、本年3月に新著「新税法理論ー優しい税法ー」を発行したことにより、そこで発表した理論に基づき税法律関係の性質についての従来の見解を変更している。従来は租税法律関係は権力関係における債権債務関係と解していたが、十五訂版では租税法律関係は債権債務関係として全体的に理解できる。税の債権債務関係は私法上の債権債務関係と同じと考え、税法で特に定めていない限り民法が適用されるとした。
    
目次  序論
    1 財政の現状
    2 租税制度の現状
    3 執行機関
    4 税理士制度
    5 わが国の租税制度の発展
     総論
  第1章 租税法律主義
    1 租税法律主義と法治主義
    2 租税法律主義の内容
  第2章 税法の法源
    1 憲法
    2 法律
    3 命令
    4 条例・規則
    5 条約
    6 判例
    7 その他
  第3章 税法の解釈と適用 
    1 借用概念
    2 実質課税の原則
    3 租税回避
    4 信義誠実の原則
  第4章 納税義務
    1 納税義務の成立
    2 税額の確定
    3 税額の変更
  第5章 納税義務の消滅
    1 納付と納期限
    2 滞納処分
    3 租税債権の優先
  第6章 不服審査および訴訟
    1 不服審査
    2 訴訟
  第7章 租税刑法
    1 税法における刑罰
    2 犯則調査
   税法各論
  第1章 所得税法
    1 所得税の概要
    2 所得税の計算の方法
    3 各種所得の金額の計算
    4 総収入金額と必要経費
    5 損益通算
    6 所得控除
    7 税額計算
    8 税額控除
    9 申告・納付・還付
   10 源泉徴収制度
   11 復興特別所得税
  第2章 相続税法
    1 相続税および贈与税の概要
    2 相続税額の計算
    3 贈与税額の計算
    4 財産の評価
  第3章 法人税法
    1 法人税の概要
    2 法人税の計算の仕組み
    3 企業会計の概要
    4 複式簿記と損益計算書および貸借対照表
    5 益金の額
    6 損金の額
    7 損金不算入
    8 有価証券の譲渡損益および時価評価損益
    9 組織再編成に係る所得の金額の計算
   10 引当金および圧縮記帳
   11 繰越欠損金および欠損金の繰戻し
   12 申告調整
   13 法人税額の計算
   14 申告と納付
   15 連結納税制度
   16 復興特別法人税
  第4章 消費税法
    1 消費税の概要
    2 消費税の仕組み
    3 納税義務者
    4 課税対象
    5 課税標準と税率
    6 前段階税額控除
    7 課税期間・申告・納付
    8 消費税の会計処理
    9 消費税法の改正
  第5章 地方税法
    1 地方税の概要
    2 道府県民税
    3 市町村民税
    4 事業税
    5 固定資産税
  第6章 国際課税
    1 国際課税の概要
    2 非居住者・外国法人
    3 租税条約
    4 タックス・ヘイブン対策税制
    5 移転価格税制
    6 過少資本税制


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