悩みの話

買ったばかりの車にキズをつけてしまった。せまい坂道を下りているとき、対向車が来たので左へ寄ったら変な音がした。よく見ると車の左側を道路標識でこすっていた。下から直射する対向車のライトがまぶしくて、標識が見えなかったのである。

十年も乗った車なら少しぐらいへこんでも何とも思わないが、買いたての新車だったので、やってしまったと思ったとたん嫌な気分に襲われた。こうした失敗をしたとき、衝撃をやわらげたり苦悩を解決したりする、いい方法はあるのだろうか。

デール・カーネギー氏の名著「道は開ける」の中に、「悩みを解決するための魔術的公式」というものが載っている。その魔法の公式は次の三段階からなっている。

その一。状況を把握し、生じうる最悪の事態を予測する。

その二。最悪の事態を予測したら、やむを得ない場合にはそれにしたがう覚悟をする。

その三。最悪の事態を受け容れる心の準備ができたら、事態を少しでも好転させるように努力する。

つまり目をそむけずに状況を分析し、最悪の事態を予測し、それを受けいれる覚悟をする。すると心の余裕が生まれ、心の余裕は不幸なできごとを克服する力を与えてくれる、ということである。この中でいちばん難しいのは、事態を直視することだと思うが、難しくてもこれをしなければ魔法の公式は使えないのである。

これを今回の事故に当てはめると、目をそむけずに車のキズを調べ、修理代と車が使えない期間を予測し、それを受けいれる覚悟をする。すると人身事故でなくてよかったとか、この事故から何か学ぶものがあるだろうか、などと考える余裕も出てくるということである。

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