驚いた話

葬儀のとき大失敗をしたことがあった。和尚が全部で九名という大きな葬儀の準備をしているとき、「九人のうち三人が導師、六人が役僧」などと考えていて、正月疲れでぼんやりしていたせいか六人しか連絡しなかったのである。

その失敗に気が付いたのは葬儀が始まる十分前のことで、気付いたとたん頭の中が真っ白になった。人間はあまりに意外なでき事に出くわすと、思考が停止してしまうことを初めて知った。思考停止の原因は、突然のでき事にたいする驚きと、時間がないという切迫感、の二つだと思う。

この葬儀がその後どうなったかというと、開始時間を少し遅らせることと、近くの和尚に来てもらうことで解決できた。文字にすればそれだけのことだが、あわてているとき適切に対処するのは難しいものである。

火事だというときには、まず水を一杯飲めとよく言われる。たしかに水でも飲んで思考停止の状態から抜けださないと、対策を立てることも、ものごとを決断することもできない。しかしよその火事だとそれほどあわてないのだから、思考停止状態になった人がいたら、まわりの人が積極的に助けてあげるべきである。

こうした思いがけない事態にぶつかっても、日頃から訓練を積んでいれば冷静に対処できるという。そのため宇宙飛行士とか飛行機の操縦士などは、突発事件に対処する訓練をたえず受けているという。

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