眼に対する侮辱

最近読んだ本にこんなことが書いてあった。ドイツ人は質実剛健な倹約家として有名であり、ケチと言われるほどつつましい生活をしているが、町作りには惜しまずに手間とお金をかける。そして道ゆく人を楽しませるために、家の回りをきれいに調え、窓を美しく飾りつける。

そういう国で育った人が日本に来てまず驚くのが、町中に林立する電柱と看板だという。世界第二の経済力といわれる国が、なぜ電柱をなくさないのか、なぜ調和のとれた町作りをしないのかと不思議に思うというのである。たしかにヨーロッパの町なかには電柱は見当たらないし、看板もきわめて少なく、あったとしても日本人には信じられないほど小さい。

そのような国では、公園に「ゴミ捨て禁止」などの看板を立てたりすると、目に対する侮辱だと言ってみんなが怒るという。目ざわりなものを見ない権利が私たちにはあるというのである。だから町の調和を破るような店を作ったりすると、誰も買い物に来てくれないという。私もそれを見習って、できるだけ目ざわりな店では買い物をしないようにしているが、問題は目ざわりでない店がほとんど無いことである。

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