蚊の話
夏のお墓まいりの最大の敵は蚊である。どんなに暑くても蚊さえいなければ墓参りも墓掃除もずいぶん楽になる。蚊に食われるとかゆいのは、吸った血が固まらないように蚊がエサの体に唾液を注入するのが原因であり、このとき病気をうつされることもある。だから蚊の発生を放置するのはきわめて近所迷惑なことでもある。
蚊は私たちに耐え忍ぶことを教えてくれるし、蚊取り線香や蚊帳(かや)をつくる人々のために貢献もしてきたが、そうした貢献ははやく過去のものにしたいと思う。夏に蚊に食われるのは当たり前とあきらめている人も多いが、それは悪あきらめというもので、努力しだいで蚊のいない町、蚊のいない国にすることも夢ではない。これも町おこし国おこしの一つである。
なぜ墓地に蚊が多いのかというと、それは蚊の生態に原因がある。卵→ボウフラ→サナギ→成虫、の順で蚊は成虫になるが、ボウフラとサナギには水が必要であり、その水もきれいすぎては具合が悪く、栄養源となる木の葉などの有機物が入っていなければならない。
だからお墓の花筒や、木の葉のたまった茶碗などは、理想的な蚊の養殖池になるのであり、そういった池を観察してみると、小さな池には少数のボウフラ、大きな池にはたくさんのボウフラがいるのが分かる。母なる蚊は水たまりの大きさによって吾が子の数を決めていると考えられるのである。
蚊の繁殖には有機物を含む水が必要なので、水たまりを無くすとか、水をきれいにすれば蚊は繁殖できない。だから墓参しない墓の花筒にはフタをするとか、茶碗などの水をきれいにしていれば蚊はいなくなる。また竹の切り株のたまり水は蚊が好む場所なので、竹を切るときは水がたまらないように切りたい。水がたまっている切り株は、ナタで割れ目を入れると水は抜けるが、すぐに割れ目が木の葉でふさがって水がたまるから、土を入れて埋めるのが一番である。
蚊は色が黒いため陽に当たると暑いらしく、日なたは苦手である。だから日射しから身をかくす草むらをなくしてしまえば蚊は少なくなる。蚊をだまし討ちにする手もある。バケツの水にパンなどを少し入れておくと、蚊が卵を産んでボウフラがわいてくる。それを頃あいを見て捨てることを繰りかえせば蚊を減らせる。
蚊が血を吸うのは、産卵に必要な栄養を確保するのが目的なので、吸血するのはメスのみであり、オスは果物の汁とか花の蜜などで生きている。メスは吸血と産卵を生涯に数回くり返しながら子孫を増やしていくから、血を提供しないことも大切である。
屋外で蚊に食われないためには、虫よけを塗る方法と、蚊取り線香を腰にぶら下げる方法がある。どちらにしても一つだけでは完全ではないが、併用すると効果は大きい。蚊の嫌う音を出して撃退する装置があるので試してみたが、少なくとも屋外では効果はなかった。
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