掃除の話
禅宗寺院でいちばん大切な荘厳(しょうごん。飾り付け)は掃除だと言われてきた。そのため掃除がよく行き届いていることを、禅寺(ぜんでら)のようだと表現することもあった。お金をかけていない庭でも、きれいに掃き清められていると、砂粒の一つ一つにいたるまで生きて輝いていて、心が洗われる思いがする。檀家さんの家で読経するときも、家の中がよく調えられていると気持ちよく読経できる。

掃除には五つの功徳があるといわれる。

一、自心清浄。散らかっている所を少し片づけるだけでも心がすっきりとする。だから掃除は最良の気分転換法である。

二、他心清浄。他人の心も清らかにするから、掃除は他に対する思いやりの実践である。

三、悪魔きたらず。きれいに掃除がなされ、履き物がきちんと揃えてあると、うす気味わるくて泥棒も入りにくいという。そういう家には良い種類の殺気が漂っているのであり、二宮尊徳翁も言っている。貧乏したくなければ、家の内外をきれいに掃除せよ。汚くしていると、貧乏神に取り付かれて思わぬ災いを招くことになると。

四、諸天降臨。神さまは清浄の地に降臨したまう。そのため日本人は、神世の昔から清浄を貴び汚れをきらい、禊ぎ(みそぎ)と掃除によって心身と住居を清らかにしてきた。

五、諸仏擁護。掃除は仏国土を荘厳することだから、まめに掃除をする人には諸仏のご加護がある。仏壇がきれいだとご先祖様もよろこぶ。

もどる