柳の木の歌
 
ヤナギの木が出てくる童謡「かなりや」は、西条八十(さいじょうやそ)作詞、成田為三(なりたためぞう)作曲の歌。一九一八年(大正七年)に「赤い鳥」誌上で発表された歌詞に、翌年、曲を付けてできた歌だという。

  かなりや

唄を忘れた金絲雀(かなりや)は
後(うしろ)の山に棄(す)てましょか
いえいえそれはなりませぬ

唄を忘れた金絲雀は
背戸(せと)の小藪(こやぶ)に埋めましょか
いえいえそれはなりませぬ

唄を忘れた金絲雀は
柳の鞭(むち)でぶちましょか
いえいえそれはかわいそう

唄を忘れた金絲雀は
象牙の船に銀の櫂(かい)
月夜の海に浮べれば
忘れた唄をおもひだす

この歌に出てくるヤナギはどのヤナギなのだろうか。ヤナギの木には意外とたくさんの種類があるが、カナリヤをぶつ鞭を作るにはかなり細い枝が必要になるから、作詞者は枝垂れ柳(しだれやなぎ)の枝を思い浮かべながらこの歌詞を書いたように思う。
 
シダレヤナギ(別名イトヤナギ)は、中国原産のヤナギ科ヤナギ属の落葉高木、最大樹高は二十メートルになり、太い枝は上に伸びるが、先端の枝は細く長く垂れさがり、葉もきわめて細長い。ただしヤナギというと、このシダレヤナギの垂れた枝を思い浮かべてしまいがちだが、ほとんどのヤナギ属の木は枝が垂れない。
 
そしてヤナギ属の木は水辺を好む。それがシダレヤナギが公園樹や街路樹としてよく水辺に植えられる理由である。野生化しているものもあって、その中にはまれに枝が垂れないタチシダレヤナギも混じっているというが、残念ながら小浜市内で枝垂れ柳を見たことはない。


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