どんぐりの木の歌
「どんぐりころころ」は、青木存義(あおきながよし)作詞、梁田貞(やなだただし)作曲の童謡。この歌詞は青木氏の著書「かはいい唱歌」で、一九二一年(大正十年)に発表されたものとあるから、すでに百年以上も歌われてきた歌である。日本の歌百選に選ばれた歌のひとつ。
ただし以下にご紹介する三番の歌詞は、幻の歌詞としてネット上に出ていた、作曲家の岩河三郎(いわかわさぶろう)氏が一九八六年に付け足したというもの。泣いてはどじょうを困らせたで終わっては、収まりが悪いと追加したものらしい。参考のために記載した。
なお私は「どんぶりこ」を「どんぐり子」と覚えていた。どんぶりことお池にはまっていたとは思わなかった。じっくり味わってみると奇妙なおもしろさと魅力を感じる歌である。
どんぐりころころ
どんぐりころころ、どんぶりこ、お池にはまって、さあ大変
どじょうが出て来て、今日は、ぼっちゃん一緒に、遊びましょう
どんぐりころころ、よろこんで、しばらく一緒に、遊んだが
やっぱりお山が、恋しいと、泣いてはどじょうを、困らせた
どんぐりころころ、泣いてたら、仲良しこりすが、とんできて
落ち葉にくるんで、おんぶして、急いでお山に、連れてった
日本にはドングリの木が二十二種あって、それらはすべてブナ科に属し、さらにブナ属、コナラ属、クリ属、シイノキ属、マテバシイ属に分かれていて、落葉樹と常緑樹の両方がある。だからムクロジ科に属するトチノキの実などは、ドングリの仲間に入れてもらえないらしい。なお代表的なドングリの木であるカシ(樫)の仲間はコナラ属に含まれる。
ドングリは団栗と漢字で書き、団には丸いという意味があるから、ドングリという言葉は丸い栗を意味する。そしてその名前の通り、ほとんどのドングリはころころと転がる丸い形をしているが、丸くない栗の実もドングリの仲間であるし、ブナ科の代表種であるブナの木のドングリは、ソバの実によく似た三角形の小さな実である。なお日本でいちばん大きいのはオキナワウラジロガシのドングリだという。
またほとんどのドングリはアクが強くてそのままでは食べられないが、ブナ、クリ、スダジイ、ツブラジイ、マテバシイ、はアク抜きせずに食べられる。ブナは山の上などの寒いところにしか生えず、しかも大量に実をつけるのは四年から八年に一度という木なので、ブナの実を食べたことのある人は少ないと思うが、バターのような食感の、栄養価の高そうな、極めておいしい実である。そのため熊の大好物というのも頷けるが、熊には似つかわしくない小さな実である。
それではこの歌に出てくるドングリは、どのドングリなのだろうか。この歌詞は、宮城県松島町出身の青木氏が、そこで過ごした幼い日の思い出をもとに作詞したものというから、松島町でいちばんよく見かけるドングリの木をもってこの問いの答えにしようと思ったが、ネットで調べても分からなかった。
私の寺の裏山に自生するドングリの木は、スダジイ、ツブラジイ、栗、ウラジロガシ、コナラ、ミズナラ、アベマキの七種。ただしツブラジイは実ができているのを見たことがない。
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