ハゼノキの歌
紅葉したハゼノキの葉が登場する「ちいさい秋みつけた」は、一九五五年(昭和三十年)に発表された、サトウハチロー作詞、中田喜直(なかだよしなお)作曲の歌。
この歌はよく理解できない歌詞ばかり出てくる歌であるが、幼いころの遠い思い出をたぐり寄せながら書いた詩、心に浮かぶ心象風景を言葉にした作品、として読めばなんとなく理解できる。
ちいさい秋みつけた
だれかさんが、だれかさんが、だれかさんが、みつけた
ちいさい秋、ちいさい秋、ちいさい秋、みつけた
めかくし鬼さん、手のなる方へ
すましたお耳に、かすかにしみた
よんでる口ぶえ、もずの声
ちいさい秋、ちいさい秋、ちいさい秋、みつけた
だれかさんが、だれかさんが、だれかさんが、みつけた
ちいさい秋、ちいさい秋、ちいさい秋、みつけた
おへやは北向き、くもりのガラス
うつろな目の色、とかしたミルク
わずかなすきから、秋の風
ちいさい秋、ちいさい秋、ちいさい秋、みつけた
だれかさんが、だれかさんが、だれかさんが、みつけた
ちいさい秋、ちいさい秋、ちいさい秋、みつけた
むかしの、むかしの、風見の鳥の
ぼやけたとさかに、はぜの葉ひとつ
はぜの葉赤くて、入日色(いりひいろ)
ちいさい秋、ちいさい秋、ちいさい秋、みつけた
ハゼノキ(櫨)は、ウルシ科ウルシ属の落葉高木、樹高は最大十二メートルになり、関東から沖縄にかけて自生するが、沖縄以外は栽培木の野生化したものといわれる。ロウソクが多用されていた時代には、この木は実からロウを採取するために各地で栽培されていたのであり、そのためこの木はロウの木の呼び名も持っている。
この木はウルシの仲間なので、ウルシほどではないが樹液に触れるとかぶれる。また真っ赤に紅葉する木の代表でもあり、作詞者はその色を入日色と表現している。ハゼノキは私の寺の裏山にもあちこちに生えていて、よく見るとよく似たヤマハゼの木もわずかに混じっている。
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