松の木の歌
「松原遠く消ゆるところ」で始まる文部省唱歌「海」は、一九一三年(大正二年)に発表された、歌詞も曲も作者不明の歌。なお「海は広いな、大きいな」で始まる同じ題名の唱歌もある。
海
松原遠く、消ゆるところ
白帆(しらほ)の影は浮かぶ
干網(ほしあみ)浜に高くして
かもめは低く波に飛ぶ
見よ昼の海
見よ昼の海
島山(いまやま)闇に、著(しる)きあたり
漁火(いさりび)光り淡(あわ)し
寄る波、岸に緩(ゆる)くして
浦風(うらかぜ)軽(かろ)く沙(いさご)吹く
見よ夜の海
見よ夜の海
松原を構成する松の木はほとんどが黒松である。赤松が海岸に生えないということは決してないが、なぜか海岸の防風林に植えられているのは黒松ばかりのように見える。なお黒松、赤松の名は樹皮の色から来ている。
クロマツとアカマツは、ともにマツ科マツ属の落葉高木、樹高は最大で三十五メートルになり、葉は針のような形をしていて、それが長さ数ミリの短枝の先に二本ずつ束生する。これを二葉性の松とか二葉松という。
それに対して山の上でよく見るゴヨウマツ(五葉松)は、名前の通り葉が五本ずつ束生する五葉性の松である。日本に自生する松は二葉性と五葉性の二種のみであるが、アメリカ原産のダイオウマツ(大王松)のような三葉性の松もある。
松の木は庭や公園によく植栽され、とくにお寺の庭と相性がよく、松の木のない寺など日本にあるのかと思うほど、どこの寺にも植えられている。なおよく見かけるのは黒松であるが、樹皮の美しさは赤松の方が上だと思うし、葉もやさしい感じがするので、庭には赤松の方が合うと思う。赤松は雌松(めまつ)とも呼ばれ、黒松は雄松(おまつ)とも呼ばれる。
日本の植木屋さんはたいへんな手間をかけて松の葉をむしって、自然な感じの枝ぶりの木に仕立てあげたりする。そのため松は金を食う木と言われたりするが、欧州で見る松は下枝を切られて傘の形になった傘松ばかりである。松の木は幹の先端部からしか枝を出さない性質があるので、下枝を切られると傘松になってしまうのである。このやり方だとお金がかからないし、街路樹の松を日傘代わりにすることもできるが、日本でこんなことをしたら松の木の冒涜といわれるかもしれない。
登山で森林限界をこえて登っていくとき、最後に見る木はたいていハイマツ(這松)である。中部地方の山だと標高二千五百メートル付近でこの木を見ることになるが、そのハイマツを下界に植えたらどうなるのだろう。這松が這わずの松になるのだろうか。
ハイマツは実は五葉松に近い五葉性の松、下界に生える赤松や黒松とは種類がそもそも違うのであるが、下界で這うか這わないかは試したことがないので分からない。
私の寺の裏山には赤松も黒松も生えていて、数は赤松の方が圧倒的に多く、尾根筋に生えているのは赤松ばかりである。これだけ松の木があれば松茸が出るのではないかと思うし、昔は出たというが、まだ見つけたことはない。
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