りんごの木の歌
 
童謡「りんごのひとりごと」は、武内俊子(たけうちとしこ)作詞、河村光陽(かわむらこうよう)作曲、光陽の長女の河村順子(じゅんこ)の歌、でもって一九四〇年(昭和十五年)にレコードが発売された歌。武内俊子は、病気で入院していたときに見舞いにもらったりんごから着想を得て、一気にこの歌詞を書いたという。

  りんごのひとりごと

私は真赤な、りんごです。お国は寒い、北の国
りんご畑の、晴れた日に、箱につめられ、汽車ぽっぽ
町の市場へ、つきました
りんご、りんご、りんご
りんご、可愛い、ひとりごと

くだもの店の、おじさんに、お顔をきれいに、みがかれて
皆んなならんだ、お店先、青いお空を、見るたびに
りんご畑を、思い出す
りんご、りんご、りんご
りんご、可愛い、ひとりごと

今頃どうして、いるかしら、りんご畑の、お爺さん
箱にりんごを、つめながら、歌をうたって、いるかしら
煙草ふかして、いるかしら
りんご、りんご、りんご
りんご、可愛い、ひとりごと

 
日本のリンゴ栽培は江戸時代に始まったとされ、そのころ栽培されていたのは中国渡来の和リンゴ、あるいは地(じ)リンゴと呼ばれる種であったが、明治初期にセイヨウリンゴ(西洋林檎)が本格的に導入されるようになると、大きさと品質で劣る和リンゴはすぐに姿を消し、今では木や実を見ることさえできなくなってしまった。だから現在日本で栽培されているのはすべてセイヨウリンゴである。
 
セイヨウリンゴ(単にリンゴとも)はバラ科リンゴ属の落葉高木、欧州から西アジアが原産地とされ、国内では寒地の果樹園で栽培されている。なお日本に古来から自生しているリンゴ属の木は、ズミ(酸実)とエゾノコリンゴ(蝦夷小林檎)の二種のみである。
 
これまでリンゴ栽培のために導入された品種は六百種を超えるといわれ、その中で現在、栽培されているのは十数種ということなので、リンゴ栽培は競争の激しい世界のようである。リンゴの実の長所は長期保存がきくこと、一年中いつでも食べられるのはそのお陰である。
 
欧州では四千年以上前からリンゴ栽培がおこなわれ、リンゴの実は古くから、知恵、不死、豊かさ、美と愛、などの象徴とされてきたという。そしてアダムとイブがエデンの園で食べた智慧の木の実もリンゴとされているが、聖書にはそれがリンゴであったとはどこにも書いていない。

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