さざんかの木の歌
 
さざんかの木が出てくる童謡「たき火」は、一九四一年(昭和十六年)にNHKのラジオ放送で発表された、巽聖歌(たつみせいか)作詞、渡辺茂(わたなべしげる)作曲の歌。
 
巽聖歌が住んでいた東京都中野区の自宅の近くに、けやき屋敷と呼ばれる大きな家があり、その家の庭にはケヤキ、ムクノキ、カシなどの大木が並びそびえていたので、落ち葉の季節になるとよく住人が落ち葉を集めてたき火をしていた。そうした武蔵野の初冬の朝の光景を元に「たき火」の歌詞は作られたという。
 
そのけやき屋敷はいまも残っていて、さざんかの生け垣は竹垣に変わってしまったが、門の横に「たき火」の歌詞創作の地を示す看板が立っているという。

  たき火

垣根(かきね)の、垣根の、曲がりかど
たき火だ、たき火だ、落ち葉たき
あたろうか、あたろうよ
北風ぴいぷう、吹いている

さざんか、さざんか、咲いた道
たき火だ、たき火だ、落ち葉たき
あたろうか、あたろうよ
しもやけ、お手々が、もうかゆい

木枯らし、木枯らし、寒い道
たき火だ、たき火だ、落ち葉たき
あたろうか、あたろうよ
相談しながら、歩いてく

サザンカはツバキ科ツバキ属の常緑樹、原種は九州、四国、山口県、沖縄県に自生し、最大樹高は八メートル、花の色は白、花びらの数は五枚から七枚、そしてこれがツバキとのいちばん大きな違いであるが、花びらは平開して咲き一枚ずつ散る。つまりツバキのように花がそのままポトリと落ちることはなく、しかも花の数が多いので落花の季節には木の下が花びらの敷物を敷いたようになる。
 
サザンカは漢字で山茶花と書き、この字を見るとサザンカの葉でお茶が作れそうにも思えるし、チャノキもサザンカもともにツバキ科ツバキ属の植物で葉の形もよく似ているが、サザンカはお茶にはならないという。
 
サザンカが一般に広まったのは、品種改良が進んだ江戸時代以降のこととされ、赤や桃色や斑入りの花が作られたり、花びらの数が増えたりして、華麗な花に変身してから急速に広まったという。
 
サザンカには多くの品種があり、その中でよく見かけるのがカンツバキ(寒椿)とタチカンツバキ(立寒椿)の二種。樹高は前者が一メートルほど、後者が三メートルほどで、花はともに八重咲きの赤、ともに栽培品種とする説とヤブツバキとの雑種とする説がある。


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