野ばらの歌
歌曲「野ばら」は、ドイツの詩人ゲーテが一七七〇年ごろに書いた詩に、一八一五年にシューベルトが曲をつけた歌。以下の近藤朔風(こんどうさくふう)訳詞の歌は、私が学校で習い覚えた懐かしい歌である。
野ばら
童(わらべ)はみたり、野なかの薔薇(ばら)
清らに咲ける、その色愛(め)でつ
飽かずながむ
紅(くれない)におう、野なかの薔薇
手折(たお)りて往(ゆ)かん、野なかの薔薇
手折らば手折れ、思出ぐさに
君を刺さん
紅におう、野なかの薔薇
童は折りぬ、野なかの薔薇
折られてあわれ、清らの色香(いろか)
永久(とわ)にあせぬ
紅におう、野なかの薔薇
野ばらは野生のバラの中でもっとも多く見かけるバラ、ノイバラの別名であり、小浜市でも日当たりのよい野原や道ばたでよく見かける。ノイバラはバラ科バラ属のつる性落葉低木、高さは最大で二メートルほど、鎌状に曲がった鋭いトゲをもつ、いわゆるイバラの道を作る植物のひとつである。なお花や実は果実酒にできる。
ただしノイバラの花は小さくて質素な白い花なので、清らかと言えなくはないが、たいていの人は手折りたいなどと思わない花である。もちろん紅におったりすることはない。
ところが図鑑を見ていたら、四国や九州でまれに見られる変種のツクシイバラの花は、薄紅色をしていて花や葉の大きさもかなり大きいとある。だとすると欧州に、赤く大きくあでやかな花の野ばらがあってもおかしくはない。そして実際ネットで調べてみたら、この歌に出てくる野ばらは日本のノイバラとは別種の赤い野ばらのことだという一文を見つけた。
もどる