鈴懸の木の歌
 
鈴懸(すずかけ)の径(みち)は、佐伯孝夫(さえきたかお)作詞、灰田有紀彦(はいだゆきひこ)作曲、灰田勝彦(かつひこ。有紀彦の弟)の歌でもって、一九四二年(昭和十七年)に発売された歌。この歌は太平洋戦争中に作られながらも戦時色がまったく感じられないという極めて珍しい歌である。

  鈴懸の径

友と語らん、鈴懸の径
通いなれたる、学校(まなびや)の街
やさしの小鈴(こすず)、葉かげに鳴れば
夢はかえるよ、鈴懸の径
(もう一度くり返す)

ススカケノキ(鈴懸木)は、がさつく大きな葉をもつプラタナスとも呼ばれる落葉高木。ところがプラタナスには、スズカケノキ、アメリカスズカケノキ、モミジバスズカケノキ、の三種があって、三種ともプラタナスの名で呼ばれ、三種ともスズカケノキ科スズカケノキ属の木である。
 
原産地は、スズカケノキが欧州から西アジア、アメリカスズカケノキが北米、そしてモミジバスズカケノキはこれら二種の雑種とある。これらの中で街路樹や公園樹としてよく植えられているのは、樹皮が一番きれいなモミジバスズカケノキである。
 
なおネットの情報によると、歌に出てくる鈴懸の径は立教大学の校内に実在する並木道がモデルとのことで、そこにはこれら三種すべてが植えられているというから、歌に登場する木も三種すべてと考えていいのだろう。
 
スズカケノキの特徴の一つは、直径三、四センチの丸い実が鈴を掛けたようにたくさんぶら下がること、そのため私はこの木の名前はその鈴を掛けたように見える実の付き方からきたと思いこんでいたが、調べてみたらそう単純ではなかった。
 
正解はというと、修験道の行者さんが入山するとき身につける装束の中に、袈裟に取り付ける梵天(ぼんてん)という丸い飾りがある。その梵天の形がプラタナスの実に似ていることと、植物学者がその梵天の名前をスズカケとまちがえたことで、スズカケノキと命名されたのだという。

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