ごみの話
　
車中泊の旅で久しぶりに北海道を回ってきた。旅の目的は円空上人関係の岩屋めぐりと、五一年前の北海道旅行の思い出の地をめぐることであった。思い出の地めぐりなどというものは、過去への執着を動機とする旅であるから、あまりいいことではないと思うが、過去を吹っ切るのに少し役に立ったと思う。
　
今回の旅で一番困ったのはゴミの処分であった。車中泊の旅をする場合、食事はコンビニで買ったもので済ませることが多い。コンビニで食べ物と飲み物を買いこみ、景色のいいところでそれを食べ、つぎにコンビニで買い物をしたときそこでゴミの処分をするという段取りである。
　
ところが今回の旅ではそれができなくなっていた。いつの間にかコンビニからゴミ箱が消えていたのである。これは許されざる行為だと思う。ゴミの一番の発生源であるコンビニが、ゴミの受け取りを拒否するなどあってはならないことで、これはコンビニが自らの存在を否定することだと思う。
　
とはいえコンビニ側にも言い分がある。店と関係のない家庭ゴミやおむつまでゴミ箱に捨てられる。何でそんなものまで我々が処分しなければいけないのか、という言い分はそれなりにもっともである。が、ゴミの受け取りを拒否する言い訳にはならない。何といってもポイ捨てゴミの最大の供給源はコンビニなのである。
　
ゴミ箱がなくなっていたのはコンビニだけではなかった。高速道路の休憩所からもゴミ箱がなくなっていた。とくに北海道の高速道路には、ふつうのゴミ箱どころか、空き缶やペットボトル用のゴミ箱さえなく、北海道で出たゴミは函館のフェリー乗り場で処分するしかなかった。見ていたら同じことをしている人がほかにも何人かいた。
　
これではそこらにゴミを捨ててくれと奨励しているようなものである。こんなことでは日本の国はゴミだらけになってしまう。川も海もゴミで埋まってしまう。というよりも、実際すでにそうなっている。なかでもひどいのが車を駐められる場所、道路脇にある駐車場所はどこもゴミだらけの状態になっていた。こうしたことが社会問題化していないのは、みんな目をそむけて見ないようにしているだけのことである。
　
最近はナビの進化と普及のお陰で、運転のプロというような人でなくても、初めての場所であっても、自分の車で行きたいところへ手軽に行けるようになった。そのため自分の車で旅をする人が増え、車中泊の旅をする人も増え、コンビニを利用する人も増え、そして捨てられるゴミも増えている。
　
コンビニで買った食べ物から出たゴミは、レジ袋に入れて捨てられることが多い。大きなレジ袋に押しこんで捨てられたゴミは、とてもポイ捨てというようなかわいいものではなく、しかも捨てたときには袋の口がしばってあっても、すぐにカラスがつっついて散らかし、あたり一面ゴミだらけにしてしまう。
　
ゴミで一番嫌われるのはおむつである。しかし子供づれの親としては、汚れたおむつをいつまでも車内に置いておくことはできないのであり、早急にどこかで処分しなければならないのである。しかしどこで処分せよというのか。また車での旅なら多少はゴミを持ち帰ることもできるが、オートバイや自転車ではそんなことはできない。だからゴミ箱がなければ即そこらに捨てられることになる。
　
ゴミを捨てる人間が悪いというが、そんなことを言っていても何の解決にもならない。ゴミはどこかで処分しなければならないのであり、処分する場所のないのが問題の核心なのである。同様にコンビニが悪いとか、自動販売機の設置者が悪いといっていても何の解決にもならない。コンビニや自動販売機のゴミ箱は公共のゴミ箱ではないのである。

　　ゴミはゴミ箱へ
　
以前は公園など人の集まる場所にはどこでもゴミ箱が置いてあった。「ゴミはゴミ箱へ」と書いた看板もよく見かけた。そのゴミ箱をみんななくしてしまったのがゴミ捨てが増えた最大の原因である。ゴミはよそで処分してもらおう、そうすればゴミ処理の費用が減らせる、そのためにはゴミ箱をなくせばよい、というやり方がまちがっているのである。こんなけちなことをしているのは先進国では日本の国ぐらいである。
　
どこでゴミを処分しようと、日本国内で発生するゴミの量、即ち処分しなければならないゴミの量はかわらない。ゴミの押し付け合いをしていても、結局は回りまわって同じ量のゴミを処分することになる。
　
たとえ旅行中に出たゴミを、すべての人が車に詰め込んで持ち帰ったとしても、そのゴミは消滅する訳ではない。持ち帰った先の自治体が処分するだけのことである。持ち帰って処分しても、ゴミが発生した場所で処分しても、ゴミの量は変わらず、ただゴミが移動しただけのことであるから、ゴミも地産地消、発生した場所で処分するのが最良の方法なのである。
　
それにゴミ箱を設置すればゴミ処理にかかる費用は安くつく。ゴミ箱のゴミを処理する方が、道に捨てられたゴミを処理するより手間がかからないのは明らかであるし、川や海のゴミの回収にはさらに多くの費用がかかる。ゴミ箱をなくしたことで結局は高くついているのである。
　
ゴミがよく捨てられるのは、駐車場、公園、草むら、川や海、などである。駐車場には車が集まり、公園には人が集まり、そして両方ともそこで飲食をする人が多い。それがこれらの場所でゴミ捨てが多発する理由であり、ゴミ箱をいちばん必要とするのは駐車場と公園、とくに駐車場である。
　
川や海や草むらにゴミを捨てる人が多いのは、人目に付かないところに捨てようという心理が影響していると思うが、これらの場所は対象が広すぎてゴミ箱の設置はむずかしい。
　
要するにゴミ問題の解決策の基本はゴミ箱を設置すること、それも国が主体となって設置することである。国主導で、法律を作って、日本国中のあらゆる駐車場や公園など人が集まる場所にゴミ箱を設置するのである。全国にそれこそ百万個のゴミ箱を設置するというつもりでかからないと、ゴミ問題は解決しないと思う。日本国内で出たゴミ、日本国民が捨てたゴミは、日本国民の税金で処理する、それが原則だと思う。
　
そして国主導でそうしたことをやった上で、コンビニや自動販売機などへのゴミ箱の設置を義務づけるのである。もちろんゴミ箱があってもゴミを捨てる人はいるが、駐車場にゴミ箱を設置するだけでも、ゴミ捨ては激減するはずである。
　
この瞬間にも大量のゴミが川から海に流れこんでいる。そうした現状を放置せず速やかに解決策を実行しなければ、いつかしっぺ返しを受けることになる。日本国民が捨てたゴミは日本国民の税金で処理する、それが基本だと思う。

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