ジャータカ物語二二

これは師が竹林精舎に滞在されたとき、ウパサールハカという墓地を選り好みするバラモンに関連して語ったことである。この大金持ちのバラモンは外道の教えを信じていたので世尊に会ったことはなかった。そのバラモンが歳をとったとき息子に言った。

「息子よ。いやしい身分の者を火葬にしたところで、私を火葬にしないでおくれ。清浄な墓地に葬っておくれ」

「私にはどこに葬ったらよいのか分かりません。その場所を教えてください」

そこでバラモンは息子と一緒に鷲の峰に登り、ある場所を指さして言った。「息子よ。ここはいやしい身分の者が火葬にされたことのない場所だ。だからここで火葬にしておくれ」。そして二人は下山した。

その日の朝、世尊は町に住む人々を観察し、この二人が聖者の最初の境地を得る段階に達していることを知った。そこで山のふもとで二人を待ち、挨拶が終わるとたずねた。「バラモンたちよ。どこへ行ってきたのか」

息子が山に登った理由を説明すると、「そこへ行ってみよう」と世尊は親子とともに山に登り、息子が「三つの小高い峰の中間です。尊師」と指さすと世尊が言った。「若者よ。そなたの父が墓地を選り好みするのは今だけのことではない。昔もここで火葬にしてくれと頼んだことがあった」。そして請われるままに過去の話をされた。

昔、その父親はやはりマガダ国のウパサールハカというバラモンとして生まれ、その息子はやはり彼の息子であった。そのとき菩薩はマガダ国のバラモンの家に生まれ、学芸を身につけると仙人になって出家し、禅定と神通力を習得してヒマラヤ地方に住み、あるとき塩と酢をもとめて鷲の峰の小屋にやって来た。そのときそこで今回と同じことが起こり、仙人がその親子に言った。

「バラモンよ。この場所で火葬になった人の数には限りがない。そなたがマガダ国のバラモンの家に生まれ、同じウパサールハカの名でこの場所で火葬にされたことさえ、一万四千回もある。火葬が行われたことのない場所、墓場になったことのない場所、がい骨で覆われたことのない場所などどこにもない」。仙人は過去を知る智慧によってそのように断言し、二つの詩をとなえた。

「ウパサールハカという名の人が

 四万人もこの地で火葬にされた

 火葬が行われなかった場所などどこにもない」

「真理、法、不殺生、節制を備えた人に

 高貴な人々はしたがう

 それらこそこの世で不滅のものである」

そして仙人は四つの崇高な境地を修行し、梵天の世界に生まれ変わって行った。

話が終わると世尊は四つの真理を明らかにし、真理の説明が終わったとき親子は聖者の最初の境地に達した。最後に世尊が言われた。「そのときの親子は今のそなたたちであり、仙人は実にわたくしであった」

出典「ジャータカ全集一〜十。中村元監修。春秋社。一九八四年」第一六六話

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